転職活動のスーツの選び方|男女別のマナーや着こなしを解説

転職活動のスーツの選び方、男女別のマナーや着こなしを解説

転職活動は、これまでのキャリアを棚卸しし、新たなステージへ進むための重要なターニングポイントです。その成否を分ける要素は多岐にわたりますが、中でも面接における「第一印象」は、合否に極めて大きな影響を与えます。そして、その第一印象を決定づけるのが「服装」、すなわちスーツの着こなしです。

「新卒の時に着ていたリクルートスーツでも大丈夫?」「どんな色のスーツを選べばいいの?」「服装自由って言われたけど、本当に私服でいいの?」

転職活動を始めると、このような服装に関する悩みが次々と浮かんでくるのではないでしょうか。特に、ある程度の社会人経験を積んだ転職者にとって、服装は単なる「身だしなみ」以上の意味を持ちます。それは、あなたのビジネスパーソンとしての成熟度、TPOをわきまえる能力、そして仕事に対する誠実な姿勢を、言葉を発する前に伝えるための強力なコミュニケーションツールとなるのです。

この記事では、転職活動におけるスーツ選びの基本から、男女別・年代別・状況別の具体的な着こなし術、さらには合わせるアイテムの選び方まで、あらゆる疑問に答えるための情報を網羅的に解説します。あなたのこれまでの経験とスキルにふさわしい「信頼感」と「自信」を演出し、成功への扉を開くための服装戦略を、ここで手に入れてください。

転職活動におけるスーツの基本

転職活動の面接に臨むにあたり、まず押さえておくべきは服装の基本です。新卒の就職活動とは異なり、転職市場では候補者の「社会人としての経験値」や「即戦力としての期待値」が見られています。その期待に応えるためにも、服装の基本を理解し、適切な装いをすることは不可欠な準備と言えるでしょう。

転職面接ではビジネススーツが基本

結論から言うと、転職活動の面接で着用すべきは「ビジネススーツ」です。これは、応募する業界や職種、企業の規模や文化に関わらず、最も確実で間違いのない選択肢です。

なぜビジネススーツが基本なのでしょうか。その理由は、面接官に与える印象にあります。

  1. 信頼性と誠実さのアピール:
    ビジネススーツは、社会人としてのフォーマルな装いの代表格です。適切に手入れされ、体にフィットしたビジネススーツを着用することで、「この人はビジネスマナーをわきまえている」「真剣に面接に臨んでいる」という誠実な姿勢を示すことができます。これは、あなたという人物への信頼感を醸成する第一歩となります。
  2. TPOをわきまえる能力の証明:
    面接は、企業と候補者が互いを評価する公式な場です。その場にふさわしい服装を選ぶことは、TPO(Time, Place, Occasion)を判断できる社会人としての基本的な能力の証明になります。特に、顧客対応や社外での折衝が多い職種では、こうした能力は高く評価されます。
  3. プロフェッショナルとしての自覚:
    ビジネススーツを着用することは、自分自身を「プロのビジネスパーソン」として位置づける行為でもあります。服装が整うことで、自然と背筋が伸び、自信を持って面接に臨むことができます。この自信に満ちた態度は、面接官にも好印象として伝わるでしょう。

具体的に「ビジネススーツ」とは、一般的にビジネスシーンで着用されるスーツを指します。後述するリクルートスーツや、冠婚葬祭で用いるフォーマルスーツとは区別されます。色や柄、素材には様々なバリエーションがありますが、転職活動においては、落ち着いた色味(ネイビーやチャコールグレー)の無地に近いデザインが最も適しています。重要なのは、奇をてらうことなく、清潔感と誠実さを最大限に引き出す服装を心がけることです。

リクルートスーツを着ても大丈夫?

転職活動を始めるにあたって、多くの人が疑問に思うのが「新卒の時に使ったリクルートスーツはまだ着れるのか?」という点でしょう。特に20代の第二新卒や社会人経験が浅い方にとっては、切実な問題かもしれません。

結論としては、リクルートスーツの着用は絶対にNGというわけではありませんが、可能な限り避けるのが賢明です。

リクルートスーツとビジネススーツは、似ているようでいて、その目的と与える印象が大きく異なります。

項目 リクルートスーツ ビジネススーツ
主な着用者 就職活動中の学生 社会人全般
主な色 黒、濃紺(ほぼ黒に近い) ネイビー、グレー、ブラウンなど多彩
ほぼ無地のみ 無地、ストライプ、チェックなど多彩
素材 ポリエステル混が多く、耐久性重視 ウール100%や混紡など、質感や機能性重視
デザイン 画一的で没個性的 多様なデザイン、個性を表現しやすい
与える印象 フレッシュ、未熟、学生っぽい 落ち着き、信頼感、プロフェッショナル

この表からもわかるように、リクルートスーツは「学生」という属性を示す記号的な役割が強く、没個性的で画一的なデザインが特徴です。これは、企業側が多くの学生を一度に選考する上で、個人の個性よりも「社会人としての素養」や「真面目さ」を判断しやすくするためのものとも言えます。

しかし、転職活動では状況が異なります。企業が求めているのは、学生のようなポテンシャルだけでなく、社会人として培ってきた経験やスキル、そして即戦力としての活躍です。そのような場でリクルートスーツを着用していると、面接官に以下のようなネガティブな印象を与えてしまうリスクがあります。

  • 「学生気分が抜けていないのでは?」: 社会人としての経験を積んだにもかかわらず、学生時代と同じ服装をしていることで、プロ意識の低さを疑われる可能性があります。
  • 「頼りない印象」: フレッシュさの裏返しとして、未熟で頼りない印象を与えかねません。特に、部下を持つポジションや、高い専門性が求められる職種では不利に働くことがあります。
  • 「準備不足・意欲の低さ」: 転職という重要な機会に対して、服装への投資を怠っていると見なされ、「本気度が低いのではないか」と受け取られるリスクもゼロではありません。

もちろん、社会人経験が1〜2年程度の第二新卒であれば、リクルートスーツでも大目に見られるケースはあります。しかし、同年代の他の候補者がしっかりとビジネススーツを着こなしていた場合、相対的に見劣りしてしまう可能性は否定できません

もし経済的な事情などでどうしてもリクルートスーツを着用せざるを得ない場合は、せめてインナーのシャツやブラウス、ネクタイなどを社会人らしい落ち着いたデザインのものに変え、リクルート感を少しでも払拭する工夫をしましょう。

しかし、転職を成功させるための「投資」と考え、可能であればこの機会にビジネススーツを1着新調することをおすすめします。体に合った質の良いビジネススーツは、あなたのキャリアを次のステージへと押し上げるための、心強い味方となってくれるはずです。

【男女共通】転職スーツ選びの3つのポイント

色と柄、デザインと素材、サイズ感

転職活動を成功に導くスーツ選びには、男女共通で押さえておくべき3つの重要なポイントがあります。それは「色と柄」「デザインと素材」「サイズ感」です。これらは、あなたの第一印象を決定づけ、ビジネスパーソンとしての信頼性やプロフェッショナリズムを伝える上で欠かせない要素です。一つずつ詳しく見ていきましょう。

① 色と柄

スーツの色と柄は、相手に与える印象を大きく左右します。転職活動というフォーマルな場では、奇抜さや個性よりも、誠実さ、清潔感、信頼感を演出することが最優先されます。

【色選びの基本】

  • ネイビー(濃紺):
    最もおすすめで、定番中の定番と言える色です。知的で誠実、真面目な印象を与え、どんな業界・職種の面接でも通用します。相手に信頼感と安心感を与えたい場合に最適な選択です。明るすぎる青ではなく、深みのあるダークネイビーを選びましょう。
  • チャコールグレー:
    ネイビーと並んで推奨される色です。落ち着きがあり、洗練された都会的な印象を与えます。穏やかで協調性のある人柄を演出したい場合に効果的です。チャコール(炭)のような、黒に近い濃いグレーが基本です。ライトグレーはややカジュアルな印象になるため、金融や公務員など堅い業界では避けた方が無難です。
  • ブラック(黒):
    リクルートスーツのイメージが強く、また日本では冠婚葬祭(特に喪服)を連想させることがあるため、ビジネスシーンでは避けるのが一般的です。素材やデザインによっては問題ない場合もありますが、転職活動においては、わざわざ黒を選ぶ積極的な理由はありません。ネイビーかグレーを選んでおけば間違いありません。

【柄選びの基本】

  • 無地:
    最もフォーマルで、誠実な印象を与える基本の柄です。どんな場面でも失敗することがなく、迷ったら無地を選んでおけば安心です。特に、金融、メーカー、公務員といった堅実さが求められる業界では無地が最適です。
  • ストライプ:
    柄物を選ぶのであれば、ストライプが選択肢に入ります。ただし、派手なものは避け、遠目には無地に見える程度の控えめなものにしましょう。

    • シャドーストライプ: 光の当たり方でストライプが浮き出て見える、非常に上品な柄です。さりげなくお洒落な印象を演出できます。
    • ピンストライプ: 細い点線で構成されたストライプ。シャープで知的な印象を与えますが、線が太いものや色が派手なものは避けましょう。
  • 避けるべき柄:
    チェック柄(グレンチェック、ウィンドウペンなど)やヘリンボーンといったカジュアルな印象が強い柄は、転職活動の場にはふさわしくありません。これらは、あくまで入社後のビジネスカジュアルシーンで楽しむものと心得ましょう。

② デザインと素材

スーツのデザインと素材は、着る人の品格やこだわりが表れる部分です。派手さではなく、質の良さと機能性を重視して選びましょう。

【デザインの基本】

  • ジャケットのボタン:
    シングルブレスト(ボタンが一列)の2つボタンが、現在のビジネススーツの主流であり、最もスタンダードなデザインです。3つボタンはやや古い印象、ダブルブレストは貫禄が出すぎるため、転職活動では避けるのが無難です。面接で着席する際も含め、2つボタンの一番下のボタンは留めない「アンボタンマナー」を徹底しましょう。
  • ラペル(襟)の形:
    最も一般的なノッチドラペルを選びましょう。ピークドラペルは華やかな印象が強いため、パーティーシーンなどに適しています。

【素材の基本】

  • ウール(羊毛):
    ビジネススーツの基本となる素材です。天然素材ならではの美しい光沢とドレープ感があり、品格を演出します。吸湿性・放湿性に優れ、シワからの回復力も高いため、機能的にも優れています。理想はウール100%ですが、価格が高くなる傾向があります。
  • ポリエステルや混紡素材:
    ポリエステルは耐久性が高く、シワになりにくいというメリットがあります。価格も比較的安価です。ただし、化学繊維特有の光沢が出てしまい、安っぽく見えてしまう可能性もあります。選ぶ際は、ウールの混合率が高いものや、天然素材に近い風合いのものを選ぶと良いでしょう。最近では、ストレッチ性やウォッシャブル機能を備えた高機能な混紡素材も増えています。

季節感も重要です。夏場であれば通気性の良いサマーウールやリネン混(ただしシワになりやすいので注意)、冬場であれば保温性の高いフランネルなどがありますが、転職活動では年間を通して着用できる「合物(あいもの)」と呼ばれる中肉の生地を1着持っておくと非常に便利です。

③ サイズ感

色や素材にどれだけこだわっても、サイズが合っていなければ全てが台無しになってしまいます。スーツの着こなしにおいて、サイズ感は最も重要な要素と言っても過言ではありません。大きすぎるスーツはだらしなく見え、小さすぎるスーツは窮屈で頼りない印象を与えます。ジャストサイズのスーツは、あなたをスマートで信頼できるビジネスパーソンに見せてくれます。

以下のチェックポイントを参考に、自分の体に完璧にフィットする一着を選びましょう。

【ジャケットのチェックポイント】

  • : 肩のラインが自分の肩先にぴったり合っているか。つまんで1cm程度のゆとりがあるのが理想です。シワやたるみが出ているのは大きすぎ、肩パッドが張っているのは小さすぎです。
  • 胸周り(ラペル): ボタンを留めた状態で、胸とジャケットの間に手のひら一枚が入るくらいのゆとりが適切です。ラペルが浮いてしまうのは小さすぎ、胸元が余るのは大きすぎです。
  • 着丈: お尻が8〜9割隠れるくらいの長さが標準です。短すぎるとカジュアルに、長すぎると野暮ったく見えます。
  • 袖丈: 腕を自然に下ろした状態で、手首の骨(くるぶし)が隠れるくらいが目安です。ワイシャツやブラウスの袖が1〜1.5cmほど覗くのが正しい着こなしです。

【パンツ・スカートのチェックポイント】

  • ウエスト: 食後でも苦しくならないよう、手のひら一枚が入る程度のゆとりを持たせましょう。ベルトなしでずり落ちるのは大きすぎです。
  • ヒップ・太もも: パツパツにならず、適度なゆとりがあるか。ポケットの口が開いてしまうのは小さすぎるサインです。
  • パンツの丈: 裾が靴の甲に軽く触れ、ワンクッションできるくらいが標準的な長さです。短すぎるとカジュアルに、長すぎるとだらしなく見えます。
  • スカートの丈: 立った時に膝が半分隠れ、座った時に膝上5cm以内に収まるのが品の良い長さです。短すぎても長すぎてもバランスが悪くなります。

既製品を購入する場合でも、これらのポイントを店員に相談し、必要であれば必ず補正(お直し)をしましょう。数百円から数千円の投資で、スーツの印象は劇的に向上します。自分の体を正確に採寸してもらい、プロのアドバイスを受けながら選ぶことが、最高のスーツと出会うための近道です。

【男性向け】スーツと合わせるアイテムの選び方

スーツ(ジャケット・スラックス)、ワイシャツ、ネクタイ、ベルト、靴、靴下、カバン、腕時計、コート

スーツ本体だけでなく、それに合わせるアイテムの一つひとつが、あなたの印象を形作ります。ここでは、男性が転職活動に臨む際に揃えるべきアイテムと、その選び方のポイントを詳しく解説します。細部にまで気を配ることで、より洗練されたプロフェッショナルな印象を与えることができます。

スーツ(ジャケット・スラックス)

前述の共通ポイントに加え、男性特有のディテールについても確認しておきましょう。

  • デザイン: シングル2つボタン、センターベント(背中の裾の切れ込みが中央に1つ)またはサイドベンツ(両サイドに2つ)が基本です。センターベントが最も標準的です。
  • スラックス: タック(腰回りのひだ)は、すっきり見えるノータックか、少しゆとりのあるワンタックが主流です。裾の仕上げは、フォーマルな印象のシングルを選びましょう。ダブルはややカジュアルな印象になります。

ワイシャツ

ワイシャツは、顔に最も近いアイテムであり、清潔感を象徴する重要なパーツです。

  • : 白の無地が絶対的な基本です。清潔感、誠実さ、フレッシュな印象を与え、どんな色のスーツやネクタイにも合います。次点で選ぶなら、爽やかな印象の薄いサックスブルーの無地まででしょう。ストライプやチェック柄、色付きのボタンなどはカジュアルなので避けてください。
  • 襟の形: レギュラーカラーまたはワイドカラーが最もスタンダードで、ネクタイとのバランスも取りやすいです。カジュアルな印象が強いボタンダウンシャツは、転職活動ではNGとされています。面接官によっては「マナーを知らない」と判断されるリスクがあります。
  • サイズ感:
    • 首周り: 一番上のボタンを留めた状態で、首と襟の間に指が1本入る程度のゆとりがあるのがジャストサイズです。
    • 袖丈: 腕をまっすぐ下ろした時に、ジャケットの袖口から1cm〜1.5cm程度シャツの袖が見えるのが正しい長さです。これにより、ジャケットの袖口が直接肌に触れて汚れるのを防ぐ役割もあります。
  • 素材と手入れ: 素材は綿100%が着心地が良いですが、アイロンがけが必須です。形態安定加工が施されたシャツは手入れが楽で便利です。面接当日は、必ずアイロンがけされたシワのないシャツを着用しましょう。襟や袖の黄ばみも厳しくチェックしてください。

ネクタイ

ネクタイは、スーツスタイルの中で唯一、色や柄で個性を表現できるアイテムですが、転職活動では控えめな選択が求められます。

  • : 情熱や意欲を伝えたい場合は赤系(ワインレッドなど)、誠実さや知的な印象を与えたい場合は青系(ネイビーなど)、協調性や落ち着きを見せたい場合はグレー系や茶系がおすすめです。派手な原色や、光沢が強すぎるものは避けましょう。応募企業のコーポレートカラーを取り入れるのも、企業研究のアピールとして有効な場合があります。
  • : 無地(ソリッド)、小さな点が並んだ小紋柄、斜めのストライプが入ったレジメンタルタイがビジネスの基本です。レジメンタルタイは、元々英国の連隊旗が由来のため、特定の所属を示す意味合いを持つ場合がありますが、日本のビジネスシーンでは一般的に問題ありません。キャラクター柄やブランドロゴが大きく入ったものは避けましょう。
  • 結び方とディンプル: 結び方は最も基本的なプレーンノット、または少し結び目が大きくなるセミウィンザーノットがおすすめです。結び目の下にくぼみを作る「ディンプル」を作ると、ネクタイが立体的になり、こなれた印象になります。

ベルト

見落としがちですが、ベルトも重要なファッションアイテムです。

  • 基本ルール: 必ず靴と色を合わせましょう。黒い靴なら黒いベルト、ダークブラウンの靴ならダークブラウンのベルトを選びます。これができていないと、一気にちぐはぐな印象になります。
  • デザイン: 素材は本革が望ましいです。バックルはシルバーでシンプルなピンバックルを選びましょう。大きすぎるバックルや、ブランドロゴが目立つものはNGです。
  • 状態: 革がひび割れていたり、使い古してヨレヨレになったりしたものは避け、綺麗な状態のものを使用しましょう。

「お洒落は足元から」という言葉通り、靴はあなたの評価を左右する重要なポイントです。

  • デザイン: 黒の革靴で、紐付きのものが絶対的なルールです。その中でも、つま先に一本線が入った「ストレートチップ」が最もフォーマル度が高く、転職活動に最適です。次点で、つま先に飾りのない「プレーントゥ」も良いでしょう。ウィングチップやUチップはややカジュアル、ローファーやスリッポンはNGです。
  • 手入れ: 面接前には必ず磨いて、綺麗な状態にしておきましょう。汚れや傷、かかとのすり減りは非常に目立ち、「細部への気配りができない人」という印象を与えてしまいます。雨の日に備えて、防水スプレーをかけておくのもおすすめです。

靴下

座った時に意外と目立つのが靴下です。

  • : スーツの色(ネイビー、グレー)か、靴の色(黒)に合わせるのが基本です。白や派手な色、柄物は絶対に避けましょう。
  • 長さ: 座った時にズボンの裾が上がっても、すねの肌が見えない長さのミドル丈(ロングホーズ)を選びましょう。くるぶし丈のソックスは厳禁です。

カバン

カバンもビジネスシーンにふさわしいものを選びます。

  • 条件: A4サイズの書類が折らずに入り、床に置いたときに自立するタイプのビジネスバッグが必須です。面接中にカバンが倒れてしまうと見栄えが良くありません。
  • 素材・色: 素材は本革または高品質なナイロンや合皮。色はが最も無難です。スーツに合わせてダークブラウンやネイビーでも良いでしょう。
  • 避けるべきもの: カジュアルな印象のリュックサック、トートバッグ、ショルダーバッグは転職活動の場にはふさわしくありません。

腕時計

時間はスマートフォンで確認する時代ですが、ビジネスシーンでは腕時計が推奨されます。

  • デザイン: シルバーのメタルバンドか、黒または茶色の革ベルトの、シンプルなアナログ時計が最も好印象です。文字盤も白や黒、ネイビーなど落ち着いた色のものを選びましょう。
  • 避けるべきもの: ゴールドの派手な時計、G-SHOCKのようなカジュアルなデジタル時計、キャラクターウォッチはNGです。スマートウォッチは、業界や企業によっては許容されますが、面接中に通知で光ったり振動したりする可能性があるため、通知をオフにするか、避けるのが無難です。

コート

冬場の面接ではコートを着用しますが、ここにもマナーがあります。

  • デザイン: ビジネス用のシンプルなコートを選びます。具体的には、ステンカラーコートチェスターコートが定番です。色は黒、ネイビー、チャコールグレー、ベージュなどがスーツに合わせやすいでしょう。
  • 避けるべきもの: ダウンジャケット、モッズコート、ダッフルコートといったカジュアルなデザインのものは避けましょう。

これらのアイテム選びのポイントは、すべて「清潔感」「誠実さ」「プロフェッショナルな姿勢」を演出するという目的に繋がっています。細部にまで気を配り、万全の態勢で面接に臨みましょう。

【女性向け】スーツと合わせるアイテムの選び方

女性の転職活動における服装は、男性に比べて選択肢が多い分、悩むポイントも増えます。しかし、基本となる考え方は同じで、「清潔感」「信頼感」「TPOをわきまえたプロ意識」を表現することが重要です。ここでは、スーツ本体から小物に至るまで、女性向けのアイテム選びのポイントを詳しく解説します。

スーツ(ジャケット・ボトムス)

女性のスーツは、ジャケットとボトムス(スカートまたはパンツ)の組み合わせが基本です。

  • ジャケット: 1つボタンか2つボタンのテーラードジャケットが最もスタンダードです。襟のないノーカラージャケットも選択肢になりますが、よりフォーマルな印象を与えたい場合はテーラードを選びましょう。ボタンはすべて留めるのが基本です。
  • ボトムス: スカートとパンツ、どちらを選んでも問題ありません。与えたい印象や応募する職種によって選び分けるのがおすすめです(詳細は後述)。色はジャケットと共布のセットアップが基本です。ネイビー、チャコールグレー、または柔らかな印象を与えるベージュなども選択肢に入ります。
  • スカート丈: 立った時に膝が半分隠れ、座った時に膝上5cm以内に収まる長さが品が良く、適切です。短すぎると軽率な印象に、長すぎると野暮ったく見えます。タイトスカートか、少しフレアが入ったAラインスカートが一般的です。
  • パンツ丈: パンツの場合、丈の長さは合わせる靴のヒールの高さによって決まります。パンプスを履いた状態で、裾がヒールの付け根あたりにくる長さが、脚を長く見せ、バランスが良いとされています。

インナー(ブラウス・カットソー)

スーツのVゾーンから見えるインナーは、顔の印象を明るく見せる重要な役割を担います。

  • : 白、またはオフホワイトが最も無難で、清潔感があります。その他、顔色を明るく見せる淡いパステルカラー(ライトブルー、薄いピンク、クリーム色など)も好印象です。派手な原色や濃い色は避けましょう。
  • デザイン:
    • 襟付きのシャツ・ブラウス: きちんとした印象を与えます。シンプルなレギュラーカラーや、第一ボタンがなく胸元が少し開いたスキッパーカラーが人気です。スキッパーカラーは快活で明るい印象を与えます。
    • カットソー: シンプルな無地のUネックやVネックのカットソーも着用できます。ただし、カジュアルになりすぎないよう、とろみのある素材など、品の良いものを選びましょう。
  • 注意点:
    • 透け感: インナーが透けない素材を選びましょう。必ず試着して確認し、必要であればベージュなど透けにくい色のキャミソールを中に着用します。
    • 胸元の開き: 胸元が大きく開きすぎているデザインは品位を欠くためNGです。お辞儀をした時に胸元が見えないか、事前に確認しておきましょう。
    • 装飾: フリルやレース、リボンが付いているデザインは、ごく控えめで上品なものであれば問題ありませんが、華美なものは避けましょう。基本はシンプルなデザインが安心です。

ストッキング

素足はマナー違反です。必ずストッキングを着用しましょう。

  • : 自分の肌の色に合った、透明感のあるナチュラルなベージュが基本です。ラメ入りや柄物はNG。
  • 黒ストッキングは避ける: 黒いストッキングは、ビジネスシーンでは一般的ではなく、お悔やみの場(喪服)を連想させるため、転職活動では基本的にNGです。アパレル業界など一部の例外はありますが、迷ったら必ずベージュを選びましょう。
  • 予備を持つ: ストッキングは非常に伝線しやすいため、必ずカバンに予備を一足入れておきましょう。面接直前に伝線に気づいても、予備があれば慌てずに対処できます。

靴(パンプス)

足元は意外と見られています。清潔感と機能性を両立させたパンプスを選びましょう。

  • デザイン: 飾りのないシンプルな黒のプレーンパンプスが最もフォーマルで、どんなスーツにも合います。
  • 素材: 本革または上品な質感の合成皮革を選びましょう。エナメルやスエード素材は避けましょう。
  • ヒールの高さ: 3cm〜5cm程度が、歩きやすく、見た目のバランスも良いとされています。高すぎるピンヒールや、カジュアルなウェッジソール、ヒールのないフラットシューズは避けましょう。ヒールは安定感のあるチャンキーヒール(太めのヒール)がおすすめです。
  • つま先の形: ラウンドトゥやアーモンドトゥなど、足に合ったもので構いませんが、つま先が開いているオープントゥはNGです。

カバン

男性同様、機能性を重視したビジネスバッグが必要です。

  • 条件: A4サイズの書類がすっぽり収まり、床に置いたときにきちんと自立するものを選びます。面接で椅子の横に置いた際、くたっと倒れないものがスマートです。
  • 色・素材: 色は黒、ネイビー、ベージュ、グレージュなど、スーツや靴に合わせやすいベーシックカラーがおすすめです。素材は本革か、上質な合皮を選びましょう。
  • デザイン: 肩掛けできる長さの持ち手だと、移動中に両手が空くため便利です。ブランドロゴが大きく目立つものや、華美な装飾がついたものは避けましょう。

腕時計

アクセサリーの代わりにもなる腕時計は、上品でシンプルなものを選びます。

  • デザイン: 小ぶりで華奢なデザインのアナログ時計が好印象です。ベルトはシルバーやゴールド(華美でないもの)のメタルバンドか、黒、茶、ベージュなどの革ベルトが良いでしょう。文字盤もシンプルで見やすいものが基本です。
  • アクセサリーとのバランス: 結婚指輪以外のアクセサリーは、基本的には着けない方が無難です。もし着ける場合は、小ぶりで揺れないタイプのピアスや、シンプルな一粒ダイヤのネックレス程度に留めましょう。

コート

冬の面接では、ビジネスシーンにふさわしいコートを選びます。

  • デザイン: トレンチコート、ステンカラーコート、ノーカラーコートなど、上品でシンプルなデザインがおすすめです。
  • : ベージュ、ネイビー、黒、ライトグレーなど、手持ちのスーツに合わせやすいベーシックな色が重宝します。

パンツとスカートはどちらを選ぶべき?

女性のスーツ選びで最も悩むのが、ボトムスをパンツにするか、スカートにするかという点でしょう。どちらが正解ということはなく、応募する職種や企業、そして自分が与えたい印象によって戦略的に選ぶのがおすすめです。

スカートスーツ パンツスーツ
与える印象 柔らかい、女性らしい、協調性がある、丁寧、親しみやすい アクティブ、活発、キャリア志向、自立している、仕事ができる
向いている職種 一般事務、受付、秘書、営業アシスタント、接客・販売職など 営業職、総合職、コンサルタント、企画職、管理職候補など
メリット ・親しみやすさを演出しやすい
・伝統的な企業や堅い業界で好まれやすい
・動きやすく機能的
・「仕事ができる女性」というイメージを演出しやすい
注意点 ・座った時の丈や所作に気をつける必要がある ・着こなしによっては男性的に見えすぎることがある

選び方のヒント:

  1. 職種で選ぶ: 上記の表を参考に、応募する職種のイメージに合わせるのが一つの方法です。例えば、外回りの多い営業職なら快活な印象のパンツ、お客様対応が中心の事務職なら柔らかな印象のスカート、といった具合です。
  2. 企業文化で選ぶ: 企業のウェブサイトや採用ページで、女性社員がどのような服装で働いているかチェックしてみましょう。パンツスタイルの社員が多ければそれに合わせる、といった判断ができます。
  3. 与えたいイメージで選ぶ: 自分のキャリアプランと結びつけ、「リーダーシップを発揮したいからパンツスーツで臨む」「チームの潤滑油のような存在になりたいからスカートスーツを選ぶ」というように、自己演出のツールとして活用するのも良いでしょう。
  4. 迷ったら: もしどちらにするか決めかねる場合は、よりフォーマルで女性らしい印象を与えるスカートスーツが無難と言えます。また、両方購入しておき、一次面接はスカート、二次面接はパンツというように使い分けるのも戦略の一つです。

最終的には、自分が最も自信を持って、自然体でいられる方を選ぶことが大切です。服装によって不安な気持ちになるくらいなら、自分が「これだ」と思えるスタイルで堂々と面接に臨むのが一番です。

【年代別】スーツ選びで意識したいポイント

20代のスーツ選び、30代のスーツ選び、40代のスーツ選び

転職活動で着るスーツは、すべての年代で同じで良いわけではありません。年齢やキャリアステージによって、企業が候補者に期待する役割は異なります。服装を通じて、その期待に応える「自分」を効果的に演出することが重要です。ここでは、20代、30代、40代それぞれの年代で意識したいスーツ選びのポイントを解説します。

20代のスーツ選び

20代の転職では、第二新卒や社会人経験数年の若手層が中心となります。この年代に求められるのは、「フレッシュさ」「ポテンシャル」「素直さ」そして「社会人としての基礎力」です。服装では、新卒の学生とは一線を画す「社会人らしさ」を演出しつつ、若々しいエネルギーを感じさせることがポイントになります。

  • キーワード: 清潔感・誠実さ・フレッシュさ
  • 目標: リクルートスーツからの脱却と、社会人としての自覚を示すこと。

具体的なポイント:

  1. リクルートスーツ感の払拭:
    これが最大のテーマです。たとえ社会人経験が1〜2年であっても、可能であれば黒無地のリクルートスーツは避け、ネイビーやチャコールグレーのビジネススーツを新調しましょう。これだけで、「学生気分が抜けて、きちんと社会人としてキャリアを考えている」というメッセージになります。
  2. ジャストサイズを徹底する:
    若手層のスーツスタイルで最も大切なのは清潔感とフィット感です。高価なスーツを着る必要はありませんが、サイズが合っていないとだらしなく見えてしまいます。肩幅、袖丈、着丈などをしっかり合わせ、若々しくもスマートな印象を目指しましょう。
  3. ベーシックを極める:
    背伸びして個性的なデザインや色柄に手を出す必要はありません。ネイビー無地、白シャツ、基本のネクタイ(男性)といった王道の組み合わせが、20代の誠実さとポテンシャルを最も引き立てます。女性も、ネイビーかグレーのセットアップに白のインナーという基本スタイルが安心です。
  4. 手頃で質の良いものを選ぶ:
    無理にハイブランドのスーツを選ぶ必要はありません。スーツ量販店やセレクトショップで、1着3〜5万円程度のスーツでも、サイズをしっかり合わせれば十分に見栄えします。ウールとポリエステルの混紡素材など、手入れがしやすく耐久性のあるものも実用的でおすすめです。

20代のうちは、服装で経験不足を補うというよりも、「この人は基本がしっかりしていて、これから伸びそうだ」と感じさせることが重要です。基本に忠実で、清潔感あふれる着こなしを心がけましょう。

30代のスーツ選び

30代は、実務経験を積み、専門性やマネジメント能力が問われる年代です。企業からは「即戦力としての活躍」や「中核を担う人材」としての期待が寄せられます。服装では、20代のフレッシュさに加え、「信頼感」「安定感」「品格」を表現することが求められます。

  • キーワード: 信頼感・品格・即戦力
  • 目標: 経験に裏打ちされた自信と落ち着きを、服装で表現すること。

具体的なポイント:

  1. 素材と質感にこだわる:
    20代よりもワンランク上の、質の良さが伝わるスーツを選びましょう。例えば、光沢の美しいウール100%の生地や、インポートの上質な生地を使用したスーツなどがおすすめです。見た目の高級感だけでなく、着心地や耐久性も格段に上がります。
  2. 体型の変化に合わせたサイズ感:
    30代になると体型が変化してくる人も少なくありません。昔のスーツを無理に着るのではなく、現在の自分の体型にジャストフィットするものを選びましょう。必要であれば、パターンオーダーなどで体型補正をしっかり行うと、より洗練された印象になります。
  3. 色柄の選択肢を少し広げる:
    基本はネイビーやチャコールグレーですが、ミディアムグレーなども選択肢に入ってきます。柄も、無地に加えて、遠目には無地に見えるシャドーストライプや上品なピンストライプなどを取り入れることで、さりげなく経験値と余裕を演出できます。
  4. 小物で差をつける:
    スーツ本体だけでなく、合わせるアイテムにもこだわりましょう。例えば、質の良い革靴やカバン、上品な腕時計、シルク100%のネクタイなど、細部にまで気を配ることで、全体の格が上がります。こうした細部へのこだわりが、「仕事でも丁寧な人物」という印象に繋がります。

30代のスーツ選びは、「安物ではない、本物」を知っている大人としての側面を見せることが重要です。自分のキャリアに見合った、信頼されるにふさわしい一着を選びましょう。

40代のスーツ選び

40代の転職では、管理職や専門職としての高い実績が求められます。服装には、これまでのキャリアで培ってきた「風格」「権威性」「圧倒的な安心感」が求められます。若作りは禁物で、年相応の落ち着きと威厳を、上質な着こなしで表現する必要があります。

  • キーワード: 風格・権威性・安心感
  • 目標: マネジメント層としての威厳と、豊富な経験に裏打ちされた人間的な深みを表現すること。

具体的なポイント:

  1. 品質と仕立ての良さを最優先する:
    この年代になると、スーツの価格よりも「いかに自分の体に合っているか」「いかに上質なものか」が重要になります。既製品が体型に合わない場合は、迷わずオーダースーツを検討しましょう。体に吸い付くようなフィット感と、美しいシルエットは、既製品では得られない自信を与えてくれます。
  2. スリーピーススーツも選択肢に:
    ジャケットとスラックスにベスト(ジレ)を加えたスリーピーススタイルは、フォーマル度と貫禄を格段に高めてくれます。特に、管理職としてのポジションを狙うのであれば非常に有効な選択肢です。誠実さと重厚感を演出し、他の候補者との差別化を図ることができます。
  3. 深みのある色を選ぶ:
    ダークネイビーやチャコールグレーといった基本色はそのままに、より深みと落ち着きのある色合いを選びましょう。上質な生地は、同じダークカラーでも深みと美しい光沢が全く異なります。素材感で差をつけるのが40代の着こなしです。
  4. 余裕を感じさせる着こなし:
    すべてのアイテムにおいて、上質で、手入れの行き届いたものを身につけましょう。シワひとつないシャツ、磨き上げられた革靴、品の良い腕時計。一つひとつのアイテムが、あなたのキャリアの厚みを物語ります。過度な装飾は不要ですが、質の良さからくる「余裕」を醸し出すことが大切です。

40代のスーツは、もはや単なる作業着ではありません。あなたのキャリアそのものを象徴する「鎧」です。豊富な経験と知識を持つにふさわしい、堂々とした着こなしで面接に臨みましょう。

【状況別】こんな時どうする?転職活動の服装マナー

転職活動を進めていると、「服装自由」「クールビズで」といったイレギュラーな指定や、夏・冬、オンラインといった特殊な状況に直面することがあります。ここでは、そうした様々なシチュエーションで迷わないための服装マナーについて、具体的に解説します。

「服装自由」「私服で」と指定された場合

企業から「服装自由」「私服でお越しください」と案内された時、多くの人が最も頭を悩ませるのではないでしょうか。本当にTシャツにジーンズで行っても良いのでしょうか?

答えは「No」です。この場合の「服装自由」は、「あなたのTPO判断能力とセンスを見せてください」という企業からのメッセージと捉えるべきです。したがって、推奨される服装は「ビジネスカジュアル」です。

ビジネスカジュアルの基本スタイル:

男性 女性
トップス ジャケット+襟付きシャツ(ノーネクタイ) ジャケット+きれいめのブラウスやカットソー
ボトムス スラックス、チノパン(きれいめなもの) スカート、きれいめのパンツ
革靴(ローファーなども可) シンプルなパンプス
NGアイテム Tシャツ、ジーンズ、パーカー、スニーカー、サンダル 露出の多い服、カジュアルすぎる服、スニーカー

企業の意図を考える:
企業が「服装自由」と指定する背景には、以下のような意図が考えられます。

  • リラックスした雰囲気で話したい。
  • 堅苦しくない社風を伝えたい。
  • 候補者の個性や人柄を見たい。
  • TPOをわきまえる社会人としての常識があるか試したい。

特にIT企業やベンチャー、クリエイティブ系の企業ではこの指定が多い傾向にあります。しかし、どんな企業であっても、面接がビジネスの場であることに変わりはありません。清潔感と相手への敬意を忘れず、あくまで「ビジネス」の範囲内でのカジュアルダウンを心がけましょう。

どうしても迷った場合:
「ビジネスカジュアルのさじ加減がわからない」「失敗して評価を下げたくない」と不安に思うのであれば、スーツを着用していくのが最も安全な選択です。スーツで行って「真面目すぎる」とマイナス評価を受けることはまずありません。むしろ「しっかりした人だ」と好意的に受け取られることの方が多いでしょう。不安なまま面接に臨むより、自分が最も自信を持てる服装を選ぶことが大切です。

夏の面接での服装(クールビズ)

夏の転職活動は、厳しい暑さとの戦いでもあります。汗だくで面接会場に到着し、だらしない印象を与えてしまうことは避けたいものです。

  • ジャケットは必須:
    企業から「クールビズで」という明確な指定がない限り、夏場であっても面接時はジャケットを着用するのが基本マナーです。移動中はジャケットを脱いで腕にかけて持ち歩き、企業の建物に入る直前に着用しましょう。
  • 「クールビズ」指定があった場合:
    企業側から指定があった場合は、その指示に従います。一般的に「ノージャケット・ノーネクタイ」を指しますが、どこまで許容されるかは企業によります。最低でも襟付きのシャツ(男性)やブラウス(女性)は着用しましょう。男性の場合、半袖シャツも許容されますが、よりフォーマルな印象を与えたいなら、長袖シャツの袖をまくる方がベターです。
  • 汗対策を万全に:
    夏の服装マナーで最も重要なのは清潔感を保つことです。

    • 機能性インナー: 吸湿速乾性に優れたインナーを着用し、汗ジミやシャツの張り付きを防ぎましょう。
    • 制汗剤: 家を出る前に使い、できれば無香料タイプを選びましょう。
    • ハンカチ・汗拭きシート: 会場に着くまでにかいた汗を、お手洗いですっきり拭き取れるように準備しておきましょう。
    • 替えのシャツ: 汗をかきやすい人は、予備のシャツを持参し、面接前に着替えるのも有効な対策です。

夏用の通気性の良いサマーウール素材のスーツを選ぶなど、素材選びも工夫すると快適に過ごせます。

冬の面接での服装(コートのマナー)

冬場の面接では、スーツの上にコートを羽織ることになりますが、このコートの扱い方にもビジネスマナーがあります。

  • コートを脱ぐタイミング:
    コートは、企業の建物に入る前に脱ぐのがマナーです。受付やエントランスで、すでにコートを脱いだ状態で入るようにしましょう。
  • コートのたたみ方と持ち方:
    脱いだコートは、裏地が表になるようにたたみます。これは、外のホコリや花粉などを室内に持ち込まないという配慮を示すためです。たたんだコートは、片方の腕にかけて持ちます。
  • 面接中のコートの置き場所:
    面接室に入ったら、コートは自分のカバンの上に置くのが基本です。カバンを椅子の横の床に置き、その上にたたんだコートを置きます。椅子の背もたれにかけるのは、シワになったり、ずり落ちたりする可能性があるため、あまり推奨されません。面接官から「そちらのハンガーをお使いください」などと案内された場合は、その指示に従いましょう。
  • マフラーや手袋:
    マフラーや手袋も、コートと同様に建物に入る前に外し、カバンの中にしまいましょう。

Web面接(オンライン面接)での服装

コロナ禍以降、急速に普及したWeb面接(オンライン面接)。自宅から参加できる手軽さがありますが、服装は対面の面接と何ら変わりありません。

  • 対面の面接と同じ服装が基本:
    画面に映るのは上半身だけだとしても、必ず上下ともにスーツを着用しましょう。何かの拍子に立ち上がった際、下が部屋着だとわかってしまっては台無しです。服装を整えることで、気持ちも引き締まります。
  • 画面映りを意識する:
    • 顔色が明るく見える色: 対面よりも画面越しは顔色が悪く見えがちです。真っ白なシャツは光を反射して顔が暗く見えることがあるため、オフホワイトや薄いブルー、薄いピンクのインナーを選ぶと、顔写りが良くなります。
    • 細かい柄は避ける: 細かすぎるストライプやチェック柄は、モニター上でちらついて見える「モアレ現象」を起こす可能性があります。無地が最も安心です。
  • 服装以外の環境も重要:
    Web面接では、服装だけでなく背景や照明、カメラの角度もあなたの印象を左右します。背景は白い壁や無地のバーチャル背景にし、生活感が出ないように注意しましょう。顔が暗くならないよう、リングライトなどを使って照明を調整することも重要です。

アパレル・ベンチャー企業の面接の服装

クリエイティブな業界や自由な社風の企業では、一般的な企業の面接とは少し異なる服装が求められる場合があります。

  • アパレル企業:
    ファッションセンスやブランドへの理解度が問われることがあります。「私服で」と指定された場合は、その企業のブランドイメージやテイストに合わせた服装を意識すると良いでしょう。例えば、きれいめカジュアルなブランドならジャケットスタイル、モード系のブランドなら少しエッジの効いた服装、といった具合です。ただし、あくまでも面接の場なので、清潔感とTPOをわきまえることが大前提です。事前に店舗を訪れ、店員の服装を参考にするのも有効です。
  • ベンチャー企業:
    「服装自由」の指定が多い業界です。前述の通り、ビジネスカジュアルが無難な選択ですが、企業のHPやSNS、社長のインタビュー記事などで社内の雰囲気や社員の服装を確認し、それに合わせるのがベストです。あまりに堅いスーツだと、逆に「社風に合わないかも」と思われてしまう可能性もゼロではありません。

いずれの場合も、「なぜその服装を選んだのか」を自分の言葉で説明できるようにしておくと、個性や企業理解のアピールに繋がります。

転職活動のスーツに関するよくある質問

ここまで転職活動のスーツ選びについて詳しく解説してきましたが、それでもまだ細かな疑問や不安が残るかもしれません。ここでは、多くの転職者が抱える「よくある質問」に対して、Q&A形式で具体的にお答えします。

スーツは何着用意すればいい?

転職活動の期間や面接の頻度にもよりますが、結論として、最低でも2着は用意しておくことを強くおすすめします。

理由は以下の通りです。

  1. 連日の面接に対応するため:
    転職活動が本格化すると、複数の企業の選考が同時進行し、面接が連日続くことも珍しくありません。1日着たスーツは、汗や湿気を吸い、シワも寄っています。同じスーツを連続で着るのは衛生的にも見た目にも良くありません。2着あれば、1日おきにスーツを休ませることができ、常に綺麗な状態で面接に臨めます。
  2. クリーニングや不測の事態に備えるため:
    面接直前にコーヒーをこぼしてしまったり、雨で濡れてしまったりといったアクシデントは起こり得ます。そんな時、替えのスーツが1着あれば、慌てずに対処できます。また、定期的にクリーニングに出す間の着替えとしても、予備のスーツは必須です。
  3. 季節への対応:
    理想を言えば、年間を通して使える「合物(あいもの)」のスーツを2着、もしくは「合物」1着と「夏用」1着があると、さらに快適に活動できます。夏用のスーツは生地が薄く、通気性が良いため、汗をかきやすい季節の面接には非常に重宝します。

経済的な負担を考慮する必要はありますが、スーツは転職成功後のビジネスライフでも必ず必要になるものです。未来への投資と考え、最低2着は揃えておくと、心に余裕を持って転職活動を進めることができるでしょう。

スーツはどこで買うのがおすすめ?

スーツを購入できる場所は様々ですが、初めてビジネススーツを買う方や、専門的なアドバイスを受けたい方には、スーツ専門店や量販店がおすすめです。ここでは、代表的な店舗とその特徴を紹介します。
(※各店舗の情報は記事作成時点のものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。)

店舗名 主な特徴 ターゲット層 価格帯の目安(スーツ)
THE SUIT COMPANY トレンド感があり、スタイリッシュなデザインが豊富。細身のシルエットが多い。 20代〜30代 ¥30,000〜¥60,000
SUIT SELECT 「BLACK LINE」「SILVER LINE」の2ラインで選びやすい。合理的で洗練されたデザイン。 20代〜30代 ¥20,000〜¥50,000
AOKI 幅広い年代に対応。機能性スーツ(ウォッシャブル、ストレッチ等)が充実。 全年代 ¥20,000〜¥80,000
洋服の青山 業界最大手で圧倒的な品揃え。サイズ展開も豊富で、誰でもフィットするものが見つかりやすい。 全年代 ¥20,000〜¥80,000
ORIHICA AOKIが展開する若者向けブランド。ビジネスからカジュアルまで幅広く展開。 20代〜30代 ¥20,000〜¥60,000

THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)

若者から本物志向の大人まで、高いクオリティとファッション性を両立したスーツを提案しています。細身でスタイリッシュなモデルが多く、20代〜30代でトレンドを意識した着こなしをしたい方におすすめです。
参照:THE SUIT COMPANY 公式サイト

SUIT SELECT(スーツセレクト)

アートディレクターの佐藤可士和氏が総合プロデュースを手がけるブランド。「BLACK LINE(都会的でモード)」と「SILVER LINE(クラシックで伝統的)」という分かりやすい2つのラインから、自分の好みに合わせて選べます。合理的に、お洒落なスーツを選びたい方に人気です。
参照:SUIT SELECT 公式サイト

AOKI(アオキ)

幅広い年代をカバーする豊富なラインナップが魅力です。特に、自宅で洗濯できる「ウォッシャブルスーツ」や、動きやすい「ストレッチスーツ」といった機能性に優れたスーツが充実しており、忙しいビジネスパーソンから高い支持を得ています。
参照:AOKI 公式サイト

洋服の青山

業界最大手の紳士服量販店で、その品揃えと店舗数は群を抜いています。オーソドックスなデザインからトレンドを取り入れたものまで幅広く、サイズ展開も非常に豊富なため、どんな体型の人でもぴったりの一着が見つかりやすいのが特徴です。
参照:洋服の青山 公式サイト

ORIHICA(オリヒカ)

AOKIが展開する、若者向けのブランドです。ビジネスシーンだけでなく、休日のカジュアルスタイルにも着回せるような、遊び心のあるデザインが特徴。ビジネスカジュアルのアイテムも豊富なので、「服装自由」の企業を受ける際にも頼りになります。
参照:ORIHICA 公式サイト

これらの店舗では、専門知識を持ったスタッフが採寸からコーディネートの相談まで乗ってくれます。自分の希望(予算、職種、与えたい印象など)を具体的に伝え、プロのアドバイスを受けながら選ぶのが、失敗しないスーツ選びのコツです。

最終面接で服装を変える必要はある?

一次面接、二次面接と選考が進み、いよいよ最終面接。ここで服装を変えるべきか悩む人もいるでしょう。

結論から言うと、無理に服装を変える必要はありません。 これまでの面接で着用したスーツが、清潔でTPOに合っているのであれば、同じ服装で臨んでも何ら問題はありません。むしろ、一貫性のある姿勢を示すことができます。

ただし、最終面接は社長や役員といった経営層が面接官となるケースがほとんどです。そのため、これまで以上にフォーマルさや格調高さを意識するというアプローチは有効です。

  • より質の良いスーツを選ぶ: もし複数のスーツを持っているなら、その中で最も上質で、仕立ての良いものを選びましょう。
  • シャツやネクタイを新調する: スーツは同じでも、インナーのシャツを新品のパリっとしたものに変えたり、ネクタイをより落ち着いた上質なものに新調したりするだけでも、印象は引き締まります。
  • スリーピースを着用する(男性): 最終面接という「ここ一番」の場で、ベスト付きのスリーピーススーツを着用し、より誠実で重厚な印象を与えるのも一つの戦略です。

重要なのは、服装を変えること自体が評価されるわけではない、ということです。あくまで、最終面接という重要な場にふさわしい敬意と意欲を、服装を通じて示すことが目的です。これまでの面接と同じ服装でも、改めてアイロンをかけ、靴を磨き直し、万全の状態で臨むことが何よりも大切です。

髪型やメイクはどうすれば良い?

スーツスタイルを完璧にしても、髪型やメイクといった「顔周り」の身だしなみが整っていなければ、全体の印象は台無しになってしまいます。服装と合わせて、トータルで清潔感を演出しましょう。

【髪型(男女共通)】

  • 清潔感が第一: フケや寝ぐせは厳禁です。面接前には必ず鏡でチェックしましょう。
  • 顔周りをすっきりと: 前髪が目にかからないようにするのが鉄則です。お辞儀をしたときに髪が顔にかかってしまうと、だらしない印象を与えます。男性はワックスなどで軽く整え、女性はピンで留めるか、横に流しましょう。
  • 長い髪はまとめる: 女性で髪が長い場合は、後ろで一つに束ねる(ポニーテール、ハーフアップ)か、シニヨンなどですっきりとまとめると、知的で誠実な印象になります。
  • 髪色: 黒または自然な茶色が無難です。明るすぎる髪色は、業界によってはマイナスな印象を与える可能性があります。

【メイク(女性)】

  • ナチュラルメイクが基本: 転職活動のメイクは、おしゃれのためではなく、健康的で快活な印象を与え、ビジネスマナーを示すためのものです。派手な色や大粒のラメ、濃すぎるアイラインやつけまつげは避けましょう。
  • ベースメイク: ファンデーションの厚塗りは避け、クマやシミをコンシーラーでカバーし、血色を良く見せるチークを薄く入れる程度にしましょう。
  • ポイントメイク: アイシャドウはブラウンやベージュ系、リップはピンクベージュやコーラルピンクなど、肌なじみの良い色がおすすめです。
  • ノーメイクはNG: ノーメイクは、TPOをわきまえていない、あるいは意欲が低いと見なされる可能性があるため、社会人のマナーとして避けましょう。

身だしなみは、「相手に不快感を与えない」という配慮の表れです。細部まで気を配り、自信を持って面接に臨みましょう。