転職活動の末に勝ち取った「内定」。その喜びも束の間、「内定承諾の連絡はどうすればいいのだろう?」と、新たな悩みに直面している方も多いのではないでしょうか。特に、企業との重要なやり取りとなる内定承諾メールは、書き方一つであなたの印象を大きく左右する可能性があります。
「感謝の気持ちは伝えたいけれど、堅苦しすぎても不自然だし…」「入社日の調整もお願いしたいけど、どう切り出せばいいんだろう?」「そもそも、メールを送る前に何か確認すべきことはある?」
このような疑問や不安を抱えるのは、あなただけではありません。内定承諾は、単なる意思表示ではなく、企業と正式な労働契約を結ぶ上での重要なステップです。ここで適切な対応ができるかどうかは、円満な入社と、その後の良好な人間関係を築くための第一歩となります。
この記事では、転職における内定承諾メールの役割から、送る前に必ず確認すべきチェックリスト、好印象を与える書き方とマナー、そして状況別にそのまま使える12種類の例文まで、網羅的に解説します。内定保留や辞退を考えている場合の対応方法にも触れているため、あなたの現在の状況に合わせた最適な行動が見つかるはずです。
この記事を最後まで読めば、自信を持って内定承諾メールを作成し、社会人として信頼されるスタートを切ることができるでしょう。
目次
内定承諾メールとは
内定承諾メールは、転職活動において企業から受け取った内定通知に対し、入社の意思を正式に表明するための重要なコミュニケーションツールです。単なる返信作業と捉えるのではなく、その役割と重要性を正しく理解することが、スムーズな入社への鍵となります。
企業に入社の意思を正式に伝えるためのメール
内定承諾メールの最も重要な役割は、「内定を受け入れ、その企業に入社する」という意思を、形に残る方法で企業側に明確に伝えることです。口頭での約束だけでは、「言った」「言わない」といったトラブルに発展する可能性がゼロではありません。メールというテキストベースの記録を残すことで、双方の認識を一致させ、労働契約締結に向けたプロセスを正式にスタートさせる合意の証となります。
法的な観点から見ると、企業からの「内定通知」は労働契約の申し込みにあたり、求職者からの「内定承諾」の意思表示によって、労働契約が成立したと解釈されるのが一般的です。つまり、内定承諾メールを送付した時点で、あなたと企業の間には法的な拘束力を持つ契約関係が生まれることになります。この点を理解しておくだけでも、メール一通の重みが変わってくるはずです。
また、このメールは、社会人としてのビジネスマナーやコミュニケーション能力を示す最初の機会でもあります。丁寧かつ適切な内容のメールを送ることで、採用担当者や配属先の上司に好印象を与え、「この人を採用して良かった」と思ってもらうことができます。入社後の円滑な人間関係を築くための第一歩として、非常に重要な役割を担っているのです。
具体的には、以下の要素を伝える機能を持っています。
- 意思表示の明確化: 「内定を承諾します」という意思を、誰が読んでも誤解の生じない形で伝えます。
- 感謝の伝達: 選考に時間を割いてもらい、自分を評価してくれたことに対する感謝の気持ちを表します。
- 入社意欲のアピール: 入社後の活躍に向けた抱負や意欲を簡潔に述べることで、ポジティブな印象を与えます。
- 今後の手続きの確認: 入社書類の提出や入社日など、次のステップに進むための事務的な確認を行います。
これらの要素を盛り込んだメールは、単なる事務連絡を超え、あなたという人材の信頼性や人柄を伝えるための重要なツールとなるのです。
内定承諾の連絡はメールと電話どちらが良い?
内定の連絡が電話で来た場合や、急いで意思を伝えたい場合、「メールと電話、どちらで返事をするべきか」と迷うことがあるかもしれません。結論から言うと、基本的にはまず電話で連絡を受け、その後、改めてメールで承諾の意思を送るのが最も丁寧で確実な方法です。しかし、状況によって最適な手段は異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、使い分けることが重要です。
連絡手段 | メリット | デメリット |
---|---|---|
メール | ・意思表示の証拠が形として残る ・相手の都合の良いタイミングで確認してもらえる ・24時間いつでも送信できる(ただし送信時間には配慮が必要) ・内容を落ち着いて推敲できる |
・相手がいつ確認するかわからない ・微妙なニュアンスが伝わりにくい可能性がある ・緊急の要件には不向き |
電話 | ・その場で確実に意思を伝えられる ・声のトーンで感謝や意欲など、感情を伝えやすい ・入社日の調整など、複雑な相談がしやすい ・迅速な対応が可能 |
・話した内容が記録として残らない ・相手の時間を拘束してしまう ・担当者が不在の場合、改めてかけ直す必要がある ・緊張してうまく話せない可能性がある |
【ケース1:内定通知がメールで届いた場合】
この場合は、メールで返信するのが基本です。企業側がメールでのコミュニケーションを選択しているため、それに合わせるのが自然な流れです。件名に「Re:」をつけたまま返信することで、採用担当者は用件をすぐに把握できます。
【ケース2:内定通知が電話で届いた場合】
電話で内定の連絡を受けた際は、まずその場で感謝の気持ちを伝え、内定を承諾する意思を口頭で述べましょう。その上で、「後ほど、改めてメールでもご連絡させていただきます」と一言添えると、非常に丁寧な印象を与えます。電話を切った後、当日中か、遅くとも翌営業日には承諾の意思を記載したメールを送付します。これにより、口頭での合意を文書で補完し、記録を残すことができます。
【ケース3:入社日の調整など、込み入った相談がある場合】
雇用条件について質問がある、あるいは現職の都合で入社日の調整が必要といった場合は、メールだけでやり取りを進めると、意図が正確に伝わらなかったり、返信の往復で時間がかかったりすることがあります。このような場合は、「まずはメールで相談事項の概要を伝え、電話で話す時間を調整する」という方法がおすすめです。「〇〇の件でご相談させていただきたく、〇分ほどお時間をいただくことは可能でしょうか」と打診することで、相手も心の準備ができ、スムーズな話し合いが期待できます。
まとめ:なぜメールが重要なのか
最終的に、どのケースであっても「内定を承諾するという意思表示をメールという形で残す」ことが極めて重要です。電話は迅速なコミュニケーションや感情の伝達に優れていますが、ビジネスにおける「合意の証拠」としてはメールに劣ります。内定承諾という重要な契約行為においては、後々のトラブルを避けるためにも、必ず文書での記録を残す習慣をつけましょう。
内定承諾メールを送る前に必ず確認すべきこと
内定の喜びに浸るあまり、すぐに承諾メールを送ってしまいたくなる気持ちは分かります。しかし、一度承諾の意思を伝えてしまうと、法的な拘束力が生じるため、後から「こんなはずではなかった」と後悔しても簡単には覆せません。メールを送る前に、いくつか重要な項目を冷静に確認する時間を持つことが、あなたのキャリアを守る上で不可欠です。
労働条件通知書の内容は希望通りか
内定通知と同時に、あるいはその前後に「労働条件通知書」または「雇用契約書」が提示されます。これらは、あなたの今後の働き方を規定する非常に重要な書類です。記載されている内容に少しでも疑問や不安があれば、必ず承諾前に企業へ問い合わせて解消しておきましょう。 ここで曖昧なまま入社を決めてしまうと、将来的なトラブルの原因となり得ます。
給与・賞与
給与は生活の基盤となる最も重要な条件の一つです。以下の項目を細かくチェックしましょう。
- 基本給: 月々の給与の基礎となる金額です。
- 諸手当: 役職手当、資格手当、住宅手当、家族手当など、どのような手当がいくら支給されるのかを確認します。
- 固定残業代(みなし残業代): 固定残業代が含まれている場合、「何時間分の残業代が、いくら含まれているのか」を必ず確認してください。また、その時間を超えた分の残業代が別途支給されるのかどうかも重要なポイントです。
- 賃金の締切日と支払日: いわゆる「締め日」と「給料日」です。
- 賞与(ボーナス): 「年2回」「業績に応じて支給」といった記載だけでなく、支給基準、算定期間、昨年度の実績などを確認できると、より具体的な年収の見通しが立てやすくなります。賞与の有無や金額は、年収に大きく影響します。
勤務地・転勤の有無
希望する勤務地で働けるかどうかは、ワークライフバランスに直結します。
- 初期配属の勤務地: 面接で聞いていた通りの場所か、正式な住所を確認します。
- 転勤の可能性: 「当面はなし」という口約束だけでなく、労働条件通知書に「転勤の有無」に関する記載があるかを確認します。もし「有り」となっている場合、その範囲(国内、海外など)や頻度について、可能な範囲で確認しておくと安心です。
業務内容
「こんな仕事をするはずじゃなかった」というミスマッチは、早期離職の大きな原因となります。
- 職務内容: 面接で説明された業務内容と、書類に記載されている内容に相違がないかを確認します。
- 部署名: 正式な配属部署名を確認します。
- 将来的な異動の可能性: 業務内容についても、将来的に部署異動や職務内容の変更があり得るのか、その可能性について確認しておくと、キャリアプランが立てやすくなります。
休日・休暇
心身の健康を保ち、長く働き続けるためには休日・休暇の制度が非常に重要です。
- 休日: 「週休2日制(月に1回以上、週2日の休みがある)」なのか、「完全週休2日制(毎週必ず2日の休みがある)」なのかは大きな違いです。また、どの曜日が休みなのか(土日祝、シフト制など)も確認します。
- 年間休日日数: 一般的には120日以上が一つの目安とされますが、業界や職種によって異なります。自身の希望と照らし合わせて確認しましょう。
- 休暇制度:
- 年次有給休暇: 入社後いつから、何日付与されるのか。法律で定められた基準を下回っていないかを確認します。
- 特別休暇: 夏季休暇、年末年始休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇など、会社独自の休暇制度についても確認しておくと良いでしょう。
福利厚生
給与以外の待遇も、働きやすさや生活の質に影響します。
- 社会保険: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の「社会保険完備」は当然として、加入する健康保険組合によっては独自の付加給付(人間ドックの補助など)がある場合もあります。
- 通勤手当: 上限額や支給条件(最短・最安ルートなど)を確認します。
- 退職金制度: 制度の有無、種類(確定拠出年金、確定給付年金など)、勤続何年から対象になるのかなどを確認します。
- その他: 住宅補助(家賃補助、社宅)、資格取得支援制度、ストックオプション、財形貯蓄制度など、企業独自の制度を確認し、自分にとって魅力的なものがあるかを見極めましょう。
入社日はいつか
労働条件通知書に記載されている入社日(雇用開始日)が、自身のスケジュールと合致しているかを確認します。特に、現職に在籍しながら転職活動をしている場合は、退職交渉に必要な期間を考慮しなければなりません。
一般的に、退職の意思は退職希望日の1〜2ヶ月前までに伝えるのがマナーとされています。会社の就業規則に「退職の申し出は〇ヶ月前まで」といった規定がある場合は、それに従う必要があります。
提示された入社日では引き継ぎ期間が足りないなど、調整が必要な場合は、内定承諾の連絡をする際に正直にその旨を伝え、相談する必要があります。無責任な退職は、前職の同僚に多大な迷惑をかけるだけでなく、業界内での自身の評判を落とすことにも繋がりかねません。円満退職できるスケジュールを確保できるか、慎重に検討しましょう。
他に選考中の企業はないか
複数の企業の選考を同時に進めている場合、内定承諾の連絡をする前に、一度立ち止まって冷静に考える時間が必要です。
- 第一志望の企業か?: 内定が出た企業は、本当にあなたが入社したいと心から思える第一志望の企業でしょうか。給与や待遇だけでなく、事業内容、企業文化、キャリアパスなど、総合的に判断して後悔のない選択をすることが重要です。
- 他社の選考状況は?: もし、より志望度の高い企業の選考が最終段階まで進んでいるのであれば、その結果を待ってから返事をしたいと考えるのは自然なことです。その場合は、正直に状況を伝えた上で、内定の返答期限を延ばしてもらえないか交渉する「内定保留」という選択肢もあります(詳しくは後述します)。
- 内定承諾の重み: 前述の通り、内定を承諾することは労働契約の成立を意味します。安易に承諾して後から辞退することは、企業に多大な迷惑をかける行為です。採用活動には多くの時間とコストがかかっていることを理解し、内定を承諾するということは、他のすべての選択肢を断ち切る覚悟を持つことだと認識しましょう。
これらの確認作業をすべて終え、心から「この企業で頑張りたい」と思えたなら、いよいよ内定承諾メールの作成に進みます。この事前確認のステップこそが、あなたの新しいキャリアを成功に導くための最も重要な準備なのです。
内定承諾メールの基本的な書き方と構成要素
内定承諾メールは、ビジネス文書として定められた型に沿って作成するのが基本です。正しい構成を理解し、各要素に適切な内容を盛り込むことで、採用担当者に礼儀正しく、かつ明確に意思を伝えることができます。ここでは、メールを構成する「件名」「宛名」「本文」「署名」の4つの要素について、それぞれの書き方のポイントを詳しく解説します。
件名
件名は、受信者が一目でメールの内容を理解できるようにするための重要な部分です。採用担当者は日々多くのメールを処理しているため、分かりにくい件名は見落とされたり、後回しにされたりする可能性があります。
基本は「Re:」をつけたまま返信
企業からの内定通知メールに返信する場合、件名は変更せず、「Re:」がついた状態で返信するのが最も確実で丁寧な方法です。「Re:」がついていることで、どのメールへの返信なのかが一目瞭然となり、担当者が過去のやり取りをスムーズに確認できます。
件名の例(返信の場合)
Re: 選考結果のご連絡(株式会社〇〇)
Re: 採用内定のご連絡【〇〇 〇〇(自分の氏名)】
新規でメールを作成する場合
電話で内定連絡を受けた後など、新規でメールを作成する場合は、「【内定承諾のご連絡】氏名」のように、用件と誰からのメールなのかが明確にわかるように記載します。
件名の例(新規作成の場合)
件名:内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
件名:【〇月〇日付 内定承諾のご連絡】〇〇 〇〇
重要なのは、「何の件で」「誰が」送ったメールなのかを簡潔に示すことです。余計な装飾や挨拶は件名には不要です。
宛名
宛名は、メールの送り先を正確に指定する部分です。誤字や敬称の間違いは大変失礼にあたるため、細心の注意を払いましょう。
構成要素
宛名は、以下の順序で記載するのが一般的です。
- 会社名: 正式名称で記載します。(株)などと略さず、「株式会社」と正確に入力します。
- 部署名: 採用担当者が所属する部署名を記載します。
- 役職名: 分かる場合は記載します。「部長」「課長」など。
- 氏名: 担当者のフルネームを記載します。
- 敬称: 個人名には「様」、部署全体に宛てる場合は「御中」を使います。
宛名の例
株式会社〇〇
人事部 採用ご担当
〇〇 様
ポイントと注意点
- 会社名は正確に: 「株式会社」が社名の前につくか(前株)、後につくか(後株)も間違えないように、企業の公式サイトなどで必ず確認しましょう。
- 担当者の名前がわからない場合: 「採用ご担当者様」と記載します。「御中」と「様」は併用できないため、「人事部御中 採用ご担当者様」のような書き方は誤りです。部署宛てであれば「人事部 御中」、担当者個人が分かっていれば「人事部 〇〇様」とします。
- 担当者が複数いる場合: 担当者全員の名前を連名で記載します。役職が上の方から順に書くのがマナーです。「人事部 部長 〇〇様、課長 △△様」のように記載します。
本文に含めるべき内容
本文は、内定承諾の意思を伝える中心部分です。以下の4つの要素を順番に盛り込むことで、論理的で丁寧な文章になります。
内定へのお礼
まず最初に、内定をいただいたことへの感謝の気持ちを伝えます。 選考に時間を割き、数多くの候補者の中から自分を選んでくれたことに対するお礼を述べることで、謙虚で誠実な人柄が伝わります。
例文
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
貴社より内定を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
内定を承諾する意思表示
次に、本題である内定承諾の意思を、誰が読んでも誤解の生じない、明確な言葉で伝えます。 ここを曖昧に表現してしまうと、企業側が「本当に承諾してくれたのだろうか?」と不安に感じてしまいます。
例文
つきましては、貴社からの内定を謹んでお受けいたします。
喜んで内定をお受けしたく、ご連絡いたしました。
「お受けいたします」「お受けしたく存じます」といった、丁寧かつ断定的な表現を使いましょう。
入社に向けた抱負や意欲
内定を承諾する意思を伝えた後、入社後の活躍に向けた前向きな気持ちや抱負を簡潔に添えると、より好印象です。採用担当者は「この人は意欲が高いな」と感じ、入社を歓迎してくれるでしょう。ただし、長々と自己アピールをする場ではないため、一文か二文程度にまとめるのがポイントです。
例文
一日も早く貴社に貢献できるよう、精一杯努力してまいる所存です。
皆様と共に働ける日を、心より楽しみにしております。
これまでの経験を活かし、貴社の発展に貢献できることを楽しみにしております。
今後の手続きに関する確認
最後に、入社に向けて必要な手続きについて触れます。入社承諾書やその他書類の提出、入社日までのスケジュールなど、次に何をすればよいのかを確認する一文を入れることで、スムーズな事務手続きに繋がります。
例文
入社にあたり、今後必要となる手続きや書類などがございましたら、ご教示いただけますと幸いです。
つきましては、入社手続きに関してご指示をいただけますでしょうか。
もし、労働条件通知書で不明な点があったり、入社日の調整をお願いしたい場合は、この部分で具体的に質問や相談を切り出します。(具体的な例文は後述)
署名
メールの最後には、自分が何者であるかを明確に示すために署名を記載します。ビジネスメールの基本マナーであり、相手が連絡を取りたいと思ったときにすぐに情報がわかるようにする配慮でもあります。
構成要素
- 氏名(フルネーム)
- 郵便番号・住所
- 電話番号(携帯電話など、連絡がつきやすいもの)
- メールアドレス
署名の例
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
〒123-4567
東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション101号室
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
署名は、本文との区別がつきやすいように、「---」
や「===」
などの罫線で囲むと見やすくなります。
これらの構成要素を正しく理解し、一つひとつ丁寧に作成することで、誰が読んでも分かりやすく、かつ好印象を与える内定承諾メールを完成させることができます。
好印象を与える内定承諾メールの返信マナー7箇条
内定承諾メールの内容と同じくらい重要なのが、送信する際の「マナー」です。タイミングや細かな配慮を欠いてしまうと、せっかくの丁寧な文章も台無しになりかねません。ここでは、社会人として信頼されるための7つの返信マナーを詳しく解説します。これらのマナーを守ることで、あなたの入社意欲と誠実さを効果的に伝えることができます。
① 内定通知から24時間以内、遅くとも2〜3日以内に返信する
内定承諾の返信は、スピードが命です。企業側は、あなたが入社してくれるかどうかで、今後の採用計画(他の候補者への連絡や追加募集など)を調整する必要があります。返信が遅れると、「入社意欲が低いのではないか」「他の企業と迷っているのではないか」といった懸念を抱かせてしまいます。
- 理想は24時間以内: 内定通知を受け取ったら、できる限り24時間以内に承諾の返信をするのが理想的です。迅速な対応は、高い入社意欲の表れとして、採用担当者にポジティブな印象を与えます。
- 遅くとも2〜3日以内に: すぐに返信できない事情がある場合でも、2〜3日以内には返信しましょう。もし企業側から返信期限が指定されている場合は、その期限を必ず守ります。
- 返信が遅れる場合: 他社の選考結果を待ちたいなど、すぐに決断できない場合は、放置せずに正直にその旨を連絡することが重要です。「内定のご連絡、誠にありがとうございます。〇月〇日までお時間をいただくことは可能でしょうか」のように、返答期限の延長を相談しましょう。無断で返信を遅らせるのが最も悪印象です。
② 企業の営業時間内に送信する
メールはいつでも送れる便利なツールですが、ビジネスシーンにおいては送信する時間帯にも配慮が必要です。深夜や早朝、休日にメールを送ると、「生活リズムが不規則な人なのだろうか」「時間管理ができない人なのかな」といった、プライベートに関するネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
- 平日の9時〜18時が目安: 企業の営業時間内(一般的には平日の午前9時から午後6時頃まで)に送信するのがビジネスマナーです。
- 夜間に作成した場合: もしメールを夜間や休日に作成した場合は、すぐに送信せず、メールソフトの「予約送信機能」を活用して、翌営業日の午前中に届くように設定するのがスマートな対応です。これにより、担当者が出勤してメールをチェックするタイミングで、あなたのメールが目に留まりやすくなるというメリットもあります。
③ 件名は「Re:」をつけたまま返信する
これは基本的なマナーですが、非常に重要です。採用担当者は、多くの候補者とメールのやり取りをしています。内定通知メールに返信する際は、件名を変更せず、「Re:」がついた状態で返信しましょう。
これにより、担当者は件名を見ただけで「〇〇の件に関する返信だ」と瞬時に理解でき、過去のメール履歴を辿りやすくなります。件名を変えてしまったり、新規作成で送ったりすると、担当者がメールを探す手間が増え、管理が煩雑になります。相手への配慮という観点からも、「Re:」は消さずに返信するよう徹底しましょう。
④ 採用担当者の部署名・氏名は正確に記載する
宛名(会社名、部署名、担当者名)は、メールを受け取る相手への敬意を示す部分です。ここの情報が不正確だと、非常に失礼な印象を与えてしまいます。
- コピー&ペーストを活用: 手打ちで入力すると、漢字の変換ミスや打ち間違いが起こりがちです。受信したメールの署名などから、会社名や氏名をコピー&ペーストすることで、間違いを確実に防ぐことができます。
- (株)などの略称はNG: 「株式会社〇〇」を「(株)〇〇」と略すのは、ビジネス文書では不適切です。必ず正式名称で記載しましょう。
- 名前が不明な場合: 担当者の名前がどうしても分からない場合は、「採用ご担当者様」とします。
⑤ 感謝の気持ちと入社の意思を明確に伝える
本文の核心部分です。内定承諾メールの目的は、「感謝」と「承諾の意思」を伝えることにあります。この2点が曖訪昧だと、メールを送る意味がありません。
- 最初に感謝を述べる: 本文の冒頭で、「この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます」と、まずはお礼の言葉を述べます。
- 承諾の意思は断定的に: 「内定を謹んでお受けいたします」のように、誰が読んでも承諾したことが分かる、明確でポジティブな表現を使いましょう。「〜しようと思います」のような曖昧な表現は避けます。
- 意欲を添える: 「貴社に貢献できるよう精一杯努めます」といった一文を添えることで、形式的な返信ではなく、血の通ったコミュニケーションとなり、好印象に繋がります。
⑥ 転職エージェント経由の場合は、まず担当者に連絡する
転職エージェントを利用して転職活動を行っている場合、内定に関する連絡は特別なルールがあります。企業から直接内定の連絡が来た場合でも、自分で企業に返信する前に、必ずまず転職エージェントの担当者に報告・相談しましょう。
- なぜエージェントを通すのか: 転職エージェントは、あなたと企業の間に立ち、入社日の調整や、言いにくい給与・待遇面の最終交渉などを代行してくれます。自分で直接企業とやり取りを始めてしまうと、こうしたエージェントのサポートが受けられなくなる可能性があります。
- 連絡の順番: ①企業から内定連絡 → ②エージェントの担当者に報告・相談 → ③担当者から今後の流れについて指示を受ける → ④(指示に従い)企業へ連絡、という流れが基本です。勝手な判断で行動せず、必ず担当者と連携を取りましょう。
⑦ 送信する前に誤字脱字がないか必ず見直す
誤字脱字は、注意力が散漫である、あるいは仕事が雑であるという印象を与えかねません。たった一文字の間違いが、あなたの評価を下げてしまう可能性があります。
- 声に出して読む: 文章を黙読するだけでは、意外とミスに気づきにくいものです。一度、声に出して読んでみると、文章のリズムがおかしい部分や誤字脱死に気づきやすくなります。
- 時間をおいて見直す: メールを作成してすぐに見直すのではなく、5〜10分ほど時間をおいてから、新鮮な目でもう一度読み返すと、客観的に文章をチェックできます。
- チェックリスト:
- 宛名(会社名、部署名、氏名)は正しいか?
- 敬称(様、御中)の使い方は正しいか?
- 自分の氏名や連絡先に間違いはないか?
- 日付や時間に間違いはないか?
- 不自然な日本語表現はないか?
この7つのマナーは、どれも社会人としての基本動作です。これらを徹底することで、採用担当者に「この人を採用して正解だった」と思わせる、完璧な内定承諾メールを送りましょう。
【状況別】そのまま使える内定承諾メールの例文12選
ここでは、さまざまな状況に対応できるよう、12パターンの内定承諾メールの例文を用意しました。件名から署名まで、そのまま使える形式になっています。自分の状況に最も近いものを選び、氏名や会社名などを書き換えて活用してください。
① 基本的な返信メールの例文
最も標準的で、どのような場面でも使える丁寧な返信メールです。感謝、承諾の意思、入社への意欲、今後の手続きの確認という4つの要素がバランス良く含まれています。
件名:Re: 選考結果のご連絡(株式会社〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇 〇〇(自分の氏名)です。
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
貴社より内定を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
つきましては、貴社からの内定を謹んでお受けいたします。
入社後は、一日も早く貴社に貢献できるよう、精一杯努力してまいる所存です。
今後の手続きや必要書類などにつきまして、ご教示いただけますと幸いです。
取り急ぎ、メールにて失礼とは存じますが、内定承諾のご連絡を申し上げます。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
〒123-4567
東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション101号室
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
② シンプルに承諾の意思を伝える例文
要点を絞り、簡潔に承諾の意思を伝えたい場合の例文です。迅速な返信が求められる場合などに適しています。
件名:Re: 採用内定のご連絡
株式会社〇〇
人事部 採用ご担当者様
お世話になっております。
〇〇 〇〇です。
この度は内定のご連絡、誠にありがとうございます。
喜んでお受けしたく、ご連絡いたしました。
入社日や今後の手続きについて、ご指示いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
③ お礼の気持ちをより丁寧に伝えたい場合の例文
面接でお世話になったことへの感謝など、よりパーソナルな気持ちを加えたい場合の例文です。熱意や誠実さが伝わります。
件名:Re: 選考結果のご連絡【〇〇 〇〇】
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
いつもお世話になっております。
この度、内定のご連絡をいただきました〇〇 〇〇です。
改めまして、この度は採用内定の通知をいただき、誠にありがとうございました。
面接の際には、〇〇様をはじめ、皆様に大変丁寧にご対応いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。
貴社からの内定を、謹んでお受けさせていただきたく存じます。
〇〇様からお伺いした事業のビジョンに大変共感しており、
貴社の一員として働けることを、今から心より楽しみにしております。
入社後は、これまでの経験を活かし、一日も早く戦力となれるよう邁進する所存です。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
〒123-4567
東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション101号室
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
④ 入社日の調整をお願いしたい場合の例文
現職の引き継ぎなどで、提示された入社日の調整が必要な場合の例文です。承諾の意思を明確に示した上で、相談事項として切り出すのがポイントです。
件名:Re: 採用内定のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
〇〇 〇〇です。
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
ぜひ、貴社からの内定をお受けしたいと考えております。
誠に恐縮なのですが、入社日についてご相談させていただきたく、ご連絡いたしました。
現在、在職中の会社にて業務の引き継ぎに約2ヶ月を要する見込みでして、
もし可能でございましたら、入社日を〇月〇日頃にご調整いただくことは可能でしょうか。
こちらの都合で大変申し訳ございませんが、ご検討いただけますと幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
⑤ 雇用条件について質問がある場合の例文
労働条件通知書の内容で確認したい点がある場合の例文です。質問がある場合でも、まずは内定へのお礼と前向きな入社の意思を伝えることが大切です。
件名:Re: 採用内定および労働条件ご提示の件(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
〇〇 〇〇です。
この度は内定のご連絡、ならびに労働条件通知書をご送付いただき、誠にありがとうございます。
貴社で働ける機会をいただけたこと、大変嬉しく思っております。
内定をありがたくお受けしたいと考えているのですが、
承諾のご連絡を差し上げる前に、1点だけ確認させていただきたい事項がございます。
ご提示いただきました労働条件のうち、「〇〇(例:固定残業手当)」の詳細について、
もう少し詳しくお伺いすることは可能でしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご回答いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
----------------------------------------
⑥ 返信が遅れてしまった場合のお詫びメール例文
やむを得ない事情で返信が期限を過ぎてしまった場合の例文です。まずはお詫びの言葉を述べ、誠意ある態度を示しましょう。
件名:Re: 採用内定のご連絡【返信が遅くなり申し訳ございません】(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇 〇〇です。
この度は、採用内定のご連絡をいただきながら、返信が遅くなり、大変申し訳ございませんでした。
貴社からの内定を、謹んでお受けいたしたく存じます。
(もし差し支えなければ、遅れた理由を簡潔に記載:例「家庭の事情で数日間、PCを確認できない状況におりました。」)
入社後は、ご迷惑をおかけした分まで挽回できるよう、一層業務に邁進する所存です。
今後は、このようなことがないよう十分に注意いたします。
誠に勝手なお願いではございますが、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑦ 採用担当者の名前がわからない場合の例文
担当者の名前がメール文面や署名になく不明な場合は、「採用ご担当者様」とします。
件名:内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 採用ご担当者様
お世話になっております。
先日、貴社より内定のご連絡をいただきました、〇〇 〇〇と申します。
この度は採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
謹んで内定をお受けいたします。
貴社の一員として貢献できることを、心より楽しみにしております。
今後の手続きについてご教示いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑧ 採用担当者が複数いる場合の例文
CCなどで複数の担当者が宛先に入っている場合は、全員の名前を記載します。役職が上の人から順に書くのがマナーです。
件名:Re: 選考結果のご連絡
株式会社〇〇
人事部
部長 〇〇様
課長 △△様
お世話になっております。
内定のご連絡をいただきました〇〇 〇〇です。
この度は採用内定のご連絡、誠にありがとうございます。
お二方には面接で大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
つきましては、貴社からの内定を謹んでお受けいたします。
今後ともご指導のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑨ 内定通知が郵送で届いた場合の例文
郵送で内定通知書や入社承諾書が届いた場合でも、まずはメールで承諾の意思を伝えるのが迅速です。書類は別途、指示に従い返送します。
件名:内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
本日、貴社より内定通知書を拝受いたしました、〇〇 〇〇と申します。
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
謹んで内定をお受けいたします。
同封されておりました入社承諾書につきましては、
署名・捺印の上、明日〇月〇日に返送させていただきます。
取り急ぎ、メールにて御礼と承諾のご連絡を申し上げます。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑩ 電話で内定連絡を受けた後に送るメールの例文
電話で口頭で承諾を伝えた後、改めてメールで送る場合の例文です。記録として残す目的があります。
件名:【本日の御礼】内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
本日お電話にて内定のご連絡をいただきました、〇〇 〇〇です。
先ほどはお忙しい中、ご連絡いただきありがとうございました。
また、改めまして、この度は内定をいただき心より御礼申し上げます。
お電話でもお伝えいたしましたが、
貴社からの内定を謹んでお受けしたく、改めてメールいたしました。
入社後は、一日も早く貴社に貢献できるよう精一杯努めてまいります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑪ 転職エージェント経由の場合(企業への返信例文)
転職エージェントの担当者から「企業へ直接メールを送ってください」と指示があった場合の例文です。エージェント経由であることを一言添えると丁寧です。
件名:内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
株式会社△△(エージェント名)の紹介で選考に参加させていただきました、
〇〇 〇〇と申します。
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
担当の△△様(エージェント担当者名)からもご連絡いただき、
貴社からの内定を謹んでお受けしたく存じます。
貴社の一員となれることを大変光栄に思います。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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⑫ 転職エージェントの担当者への連絡例文
企業に連絡する前に、まずはエージェントの担当者に報告・相談するための例文です。
件名:【〇〇株式会社の内定について】(自分の氏名)
株式会社△△(エージェント名)
〇〇様
いつもお世話になっております。
〇〇です。
本日、〇〇株式会社の〇〇様より、
お電話にて内定のご連絡をいただきましたので、ご報告いたします。
つきましては、内定をありがたくお受けしたいと考えております。
今後の手続きや、企業様への連絡方法についてご指示いただけますでしょうか。
(もし給与や入社日など交渉したいことがあれば、ここで相談する)
例:誠に恐縮ですが、現職の引き継ぎの都合上、入社日を〇月以降でご調整いただくことは可能か、
ご確認いただくことはできますでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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内定承諾以外の対応とメール例文
転職活動では、必ずしも「内定=即承諾」とならないケースもあります。他に本命の企業がある場合や、やむを得ず辞退しなければならない場合など、承諾以外の対応が必要になることも少なくありません。ここでは、「内定保留」と「内定辞退」という2つのケースについて、適切な伝え方とメール例文を解説します。どちらのケースでも、誠実で丁寧な対応を心がけることが、社会人としての信頼を維持する上で非常に重要です。
内定を保留したい場合の伝え方と例文
「第一志望の企業の選考結果を待ちたい」「家族と相談する時間が欲しい」など、すぐに内定を承諾できない正当な理由がある場合、企業に返答期限の延長を願い出る「内定保留」を依頼することができます。
内定保留を依頼するときのポイント
内定保留は、企業側に「自社への入社意欲は高くないのかもしれない」という懸念を抱かせる可能性がある、デリケートな依頼です。成功させるためには、以下のポイントを押さえた上で、慎重に伝えましょう。
- まずは内定への感謝を伝える: 保留のお願いをする前に、まずは内定をいただいたことへの感謝を丁寧に伝えます。これにより、企業への敬意を示し、ポジティブな印象を保つことができます。
- 保留したい理由を正直かつ簡潔に伝える: なぜ保留したいのか、その理由を正直に伝えましょう。最も多いのは「他社の選考結果を待ちたいため」という理由です。嘘をついたり、曖昧な言い方をしたりすると、不信感を与えてしまいます。「現在選考が進んでいる他社の結果をすべていただいた上で、慎重に判断させていただきたく存じます」といった形で、誠実に伝えましょう。
- 具体的な回答期限を提示する: 「少し考えさせてください」といった曖昧な依頼ではなく、「〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか」と、具体的な日付を自分から提示することが重要です。これにより、企業側も今後のスケジュールを立てやすくなります。保留期間は、一般的に1週間以内が限度とされています。あまりに長い期間を要求するのは避けましょう。
- 入社意欲が高いことをアピールする: 「貴社への入社を前向きに検討しております」といった一文を添え、あくまでも入社意欲が高いことを伝えましょう。保留=辞退の可能性、と企業に思わせないための重要な配慮です。
- 電話での連絡も検討する: メールだけで依頼するのに気が引ける場合は、まず電話で担当者に直接お詫びとお願いを伝え、その後、確認のためにメールを送るという方法も非常に丁寧です。
内定保留メールの例文
件名:Re: 採用内定のご連絡【回答期限についてのご相談】(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇 〇〇です。
この度は、採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
貴社より高くご評価いただけたこと、大変光栄に存じます。
誠に恐縮なお願いで大変恐縮なのですが、
内定へのお返事を、〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか。
現在、選考が進んでいる他社がございまして、
すべての結果が出揃った上で、慎重に自身のキャリアについて考え、
最終的な決断をさせていただきたいと考えております。
貴社にご迷惑をおかけすることを重々承知の上でのお願いとなり、
大変申し訳ございませんが、何卒ご理解いただけますと幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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内定を辞退する場合の伝え方と例文
熟考の末、やむを得ず内定を辞退するという決断に至ることもあります。内定辞退は、企業にとって採用計画が白紙に戻ることを意味し、多大な迷惑をかける行為です。だからこそ、最大限の誠意をもって、迅速かつ丁寧に伝える必要があります。
内定辞退を伝える際のマナー
- 決断したら、一刻も早く連絡する: 辞退を決めたら、先延ばしにせず、すぐに連絡するのが最低限のマナーです。企業はあなたのために他の候補者を断っている可能性があり、連絡が遅れるほど迷惑が大きくなります。
- 連絡は「電話」が基本。メールは補足: 内定辞退のような重要かつお詫びをすべき用件は、まず電話で直接伝えるのが鉄則です。声で直接、謝罪の意を伝えることで誠意を示します。担当者が不在の場合は、改めてかけ直すか、伝言をお願いしましょう。メール一本で済ませるのは、非常に失礼な行為と見なされます。メールは、電話で伝えた後に、確認と改めてのお詫びのために送るものと心得ましょう。
- 辞退理由は簡潔に: 電話やメールで辞退理由を尋ねられることがあります。詳細に話す必要はなく、「検討の結果、一身上の都合により」「自身の適性を慎重に検討した結果」といった表現で十分です。もし他社への入社を決めた場合でも、「他社から内定をいただき、そちらにご縁を感じたため」と正直に、しかし相手企業への配慮を忘れずに伝えるのが誠実な対応です。
- お詫びの気持ちを明確に伝える: 自分の決断が企業に迷惑をかけることを理解し、「ご期待に沿えず申し訳ございません」「多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」といったお詫びの言葉を必ず伝えましょう。
内定辞退メールの例文
※このメールは、電話で辞退の連絡をした後に送ることを想定しています。
件名:内定辞退のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
〇〇 〇〇です。
先ほどお電話にてご連絡させていただきましたが、
改めまして、内定辞退のご連絡を差し上げました。
この度は、内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
このような素晴らしい機会をいただいたにもかかわらず、
検討の結果、誠に勝手ながら、この度の内定を辞退させていただきたく存じます。
貴重なお時間を割いて選考していただいたにもかかわらず、
このようなご連絡となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。
直接お伺いしてお詫びすべきところ、
メールでのご連絡となります失礼をお許しください。
末筆ではございますが、貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
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〇〇 〇〇(ふりがな)
電話番号:090-1234-5678
メールアドレス:your.name@email.com
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内定承諾に関するよくある質問
内定承諾のプロセスでは、多くの人が同じような疑問や不安を抱きます。ここでは、特によくある質問とその回答をまとめました。いざという時に慌てないよう、事前に確認しておきましょう。
内定承諾後に辞退することは可能?
「内定承諾メールを送ったけれど、その後にもっと志望度の高い企業から内定が出た」「家庭の事情が変わり、入社が難しくなった」など、一度承諾した内定を辞退せざるを得ない状況に陥る可能性はゼロではありません。
法的には可能だが誠実な対応が不可欠
結論から言うと、法的には内定承諾後であっても辞退(労働契約の解約)は可能です。日本の民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用契約について、労働者はいつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れの日から2週間が経過することによって契約が終了すると定められています。
しかし、法律で可能だからといって、安易に辞退して良いわけではありません。企業はあなたが入社すること前提で、採用活動を終了し、受け入れ準備を進めています。内定承諾後の辞退は、企業に金銭的・時間的な損害を与え、採用担当者や配属先の部署に多大な迷惑をかける重大な契約違反行為(債務不履行)であるということを、強く認識する必要があります。場合によっては、企業から損害賠償を請求されるリスクも皆無ではありません(実際に請求に至るケースは稀ですが、可能性はあります)。
何よりも、社会人としての信頼を著しく損なう行為です。将来、その企業やそのグループ会社と何らかの形で関わることがあるかもしれません。狭い業界であれば、悪い評判が広まってしまう可能性もあります。内定を承諾するということは、それだけの重みを持つ決断なのです。
辞退を決めたらすぐに電話で直接伝える
万が一、どうしても辞退しなければならない状況になった場合は、その決断をした時点で、一刻も早く、必ず電話で採用担当者に直接連絡をしてください。
- メール一本で済ませるのは厳禁: 最もやってはいけないのが、メール一本で辞退の連絡を済ませることです。これは社会人として著しくマナーに欠ける行為であり、相手に最大限の不快感を与えます。
- 誠心誠意、謝罪する: 電話では、まず自分の名前を名乗り、内定承諾後に辞退するという非礼を、誠心誠意お詫びします。辞退理由は正直に、しかし簡潔に伝えます。言い訳がましくなったり、相手を責めるような言い方になったりしないよう、細心の注意を払いましょう。
- 電話の後、お詫びのメールを送る: 電話で直接謝罪した後、改めてお詫びの気持ちを伝えるために、辞退メール(手紙がより丁寧)を送るのが望ましいです。
承諾メールを送ったのに返信がない場合はどうする?
内定承諾のメールを送った後、企業から何の返信もないと、「ちゃんと届いているだろうか」「何か不備があっただろうか」と不安になるものです。
まず、承諾メールに対して必ず返信があるとは限りません。 企業側としては、承諾の意思が確認できれば、次は入社手続きの準備に入るため、特に連絡事項がなければ返信をしないケースも多くあります。
しかし、あまりに音沙汰がないと不安になるのも事実です。以下の手順で対応してみましょう。
- まずは3営業日ほど待つ: 採用担当者は他の業務で忙しい場合もあります。送信後すぐに返信を期待せず、まずは3営業日程度は様子を見ましょう。
- 迷惑メールフォルダを確認する: 企業からの返信が、誤って迷惑メールフォルダに振り分けられている可能性があります。確認メールを送る前に、必ずチェックしましょう。
- 確認のメールを送る: 3営業日以上経っても何の連絡もない場合は、確認のメールを送ってみましょう。相手を急かしたり、責めたりするような文面は避け、「メールが無事届いておりますでしょうか」と、あくまでもこちらの受信状況を確認する体裁で、丁寧に問い合わせるのがポイントです。
確認メールの例文
件名:Re: 内定承諾のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社〇〇
人事部 〇〇様
お世話になっております。
〇〇 〇〇です。
〇月〇日に内定承諾のご連絡をメールにてお送りいたしましたが、
無事に届いておりますでしょうか。
念のためのご確認でございます。
もし、行き違いになっておりましたら、大変申し訳ございません。
お忙しいところ恐縮ですが、ご確認いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
雇用契約書などの入社手続き書類はいつもらえる?
内定承諾後、正式な雇用契約書や、社会保険の手続きに必要な書類(年金手帳、雇用保険被保険者証など)、身元保証書といった入社手続き書類の提出を求められます。これらの書類がいつ届くのかも、気になるポイントの一つです。
書類が送られてくるタイミングは、企業によって様々です。
- 内定承諾後すぐ: 承諾の返信後、数日〜1週間程度で送られてくるケース。
- 入社日の1ヶ月〜2週間前: 入社日が近づいたタイミングで、まとめて送られてくるケース。
- 入社日当日: 入社初日にオリエンテーションの一環として手渡され、その場で記入・提出するケース。
一般的には、入社日の2週間前頃までには何らかの案内があることが多いです。もし、入社日が迫っているにもかかわらず何の連絡もない場合は、前述の確認メールと同様に、丁寧に問い合わせてみましょう。
内定承諾メールの本文で、「今後の手続きについてご教示いただけますと幸いです」と一文添えておけば、企業側も案内のタイミングを伝えてくれる可能性が高まります。