ハローワークを使った転職の始め方|メリット・デメリットも解説

ハローワークを使った転職の始め方、メリット・デメリットも解説

転職を考えたとき、多くの人がまず思い浮かべる選択肢の一つが「ハローワーク」ではないでしょうか。国が運営する公的な就職支援機関として、全国各地に設置されており、誰でも無料で利用できる身近な存在です。しかし、民間の転職サイトや転職エージェントが多様化する現代において、「ハローワークって具体的に何ができるの?」「利用するメリットやデメリットは?」といった疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では、ハローワークの基本的な役割から、利用するメリット・デメリット、具体的な活用方法、そして民間の転職サービスとの違いまで、網羅的に解説します。ハローワークを上手に活用し、自分に合った転職活動を進めるための知識を深めていきましょう。

この記事を読めば、ハローワークがあなたの転職活動においてどのような役割を果たせるのかが明確になり、より戦略的にキャリアプランを立てられるようになります。特に、地元での就職を希望する方、未経験の分野に挑戦したい方、そして雇用保険の手続きと転職活動を同時に進めたい方にとっては、ハローワークは非常に心強い味方となるでしょう。


ハローワーク(公共職業安定所)とは?

ハローワーク(公共職業安定所)とは?

ハローワークは、正式名称を「公共職業安定所」といい、国(厚生労働省)が運営する総合的な雇用サービス機関です。その主な目的は、仕事を探している人(求職者)と、人材を求めている企業(求人者)を結びつけ、国民の雇用の安定を図ることにあります。

全国に540か所以上(令和6年4月1日時点)の拠点が設置されており、地域に密着した雇用対策の拠点としての役割を担っています。利用対象者に制限はなく、新卒者から中高年、障害のある方、子育て中の女性など、年齢や経歴、状況に関わらず誰でも無料で利用できるのが最大の特徴です。

民間の転職サービスが主に営利目的で運営されるのに対し、ハローワークは公的な機関として、利益を追求することなく、あくまで国民の安定した職業生活を支えるという視点からサービスを提供しています。そのため、求職者一人ひとりに対して中立的かつ公平な立場で支援を行うことが基本姿勢となっています。

転職活動においては、求人情報の提供だけでなく、キャリアに関する相談、応募書類の添削、面接対策、さらにはスキルアップのための職業訓練の斡旋まで、多岐にわたるサポートを受けることが可能です。また、会社を退職した際に必要となる雇用保険(失業保険)の受給手続きもハローワークが唯一の窓口となっており、失業中の生活を支えながら次の仕事を探すための重要な拠点となります。

このように、ハローワークは単なる「仕事を紹介してくれる場所」にとどまらず、求職から就職、そしてスキルアップや生活保障までをワンストップで支援する、国民のためのセーフティネットとしての役割を担っているのです。

ハローワークでできること

ハローワークでは、転職や就職に関するさまざまなサービスを無料で受けることができます。具体的にどのようなことができるのか、主なサービス内容を詳しく見ていきましょう。

サービス分類 具体的なサービス内容
求職サポート 求人情報の検索・閲覧、職業相談、求人の紹介、紹介状の発行
スキルアップ支援 職業訓練(ハロートレーニング)の相談・申込み
雇用保険関連 雇用保険(失業手当)の受給手続き、各種手当・給付金の申請
応募・選考対策 履歴書・職務経歴書の作成支援、添削、面接対策(模擬面接など)
情報提供 各種セミナー・イベントの開催(就職支援セミナー、合同面接会など)

1. 求人情報の検索・紹介
ハローワークの最も基本的な機能です。施設内に設置された検索・登録用パソコンを使って、全国のハローワークに寄せられた膨大な求人情報を自由に検索・閲覧できます。また、窓口の相談員に希望条件を伝えることで、自分に合った求人を探してもらったり、まだ公開されていない新着求人を紹介してもらえたりすることもあります。

2. 窓口での職業相談
専門の相談員によるキャリアカウンセリングを受けることができます。「どんな仕事が向いているかわからない」「自分のキャリアプランに悩んでいる」といった漠然とした悩みから、「この求人に応募したいが、自分のスキルで通用するか不安」といった具体的な相談まで、幅広く対応してくれます。客観的な視点からアドバイスをもらえるため、自己分析を深めたり、キャリアの方向性を見直したりする良い機会になります。

3. 応募書類の添削・面接対策
応募したい企業が決まったら、履歴書や職務経歴書の書き方についてアドバイスをもらったり、添削を受けたりすることができます。特に職務経歴書は、これまでの経験を効果的にアピールするための重要な書類です。第三者の視点でチェックしてもらうことで、より完成度の高い書類を作成できます。
さらに、希望者には模擬面接などの面接対策も実施しています。入退室のマナーから質疑応答のポイントまで、実践的なトレーニングを受けることで、本番への自信をつけることができます。

4. 職業訓練(ハロートレーニング)の斡旋
「未経験の職種に挑戦したいがスキルがない」「ブランクがあるので知識をアップデートしたい」という方のために、公的な職業訓練制度である「ハロートレーニング」の相談や申し込みを受け付けています。IT、WEBデザイン、医療事務、介護、経理、CADなど、多種多様なコースが用意されており、原則として無料で受講できます(テキスト代などは自己負担)。訓練を受けながら、条件を満たせば「職業訓練受講給付金」を受け取れる場合もあり、スキルアップと生活の安定を両立しながら転職活動を進めることが可能です。

5. 雇用保険(失業手当)の手続き
会社を退職し、一定の条件を満たしている場合、再就職するまでの間の生活を支える「雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)」を受け取ることができます。この手続きを行えるのは、居住地を管轄するハローワークのみです。離職票などの必要書類を持参し、求職の申し込みと同時に手続きを行います。転職活動と生活保障の手続きを同じ場所で一括して行えるのは、ハローワークならではの大きな利点です。

これらのサービスを総合的に活用することで、転職活動を多角的に、そして安心して進めることができます。次の章では、これらのサービスがもたらす具体的なメリットについて、さらに詳しく掘り下げていきます。


ハローワークを利用する5つのメリット

地元の中小企業の求人が多い、無料で職業相談ができる、職業訓練(ハロートレーニング)を受けられる、雇用保険(失業保険)の手続きができる、採用意欲の高い企業に出会える可能性がある

ハローワークには、民間の転職サービスにはない独自の強みがあります。ここでは、ハローワークを利用することで得られる主な5つのメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。これらのメリットを理解することで、自分の転職活動にハローワークをどう活かすべきかが見えてくるでしょう。

① 地元の中小企業の求人が多い

ハローワークの最大のメリットの一つは、地域に根差した中小企業の求人情報が豊富に集まっていることです。多くの民間転職サイトは、掲載に数十万円から数百万円の費用がかかるため、採用に多額のコストをかけられない中小企業にとってはハードルが高いのが実情です。一方、ハローワークは無料で求人を掲載できるため、地元の中小企業が積極的に活用しています。

これにより、以下のような恩恵が期待できます。

  • 大手転職サイトにはない「隠れた優良企業」との出会い: 全国的な知名度はなくても、地域で高い技術力や安定した経営基盤を持つ優良企業は数多く存在します。ハローワークは、そうした企業と出会える貴重なプラットフォームです。
  • Uターン・Iターン転職に強い: 地元の求人に特化しているため、「生まれ育った街で働きたい」「地方でのびのびと子育てをしながらキャリアを続けたい」といったUターン・Iターン転職を希望する人にとっては、最適な求人を探しやすい環境です。
  • 転勤の可能性が低い求人が見つかりやすい: 地域密着型の企業が多いため、全国転勤の可能性が低い求人が多く見つかります。「一つの場所で腰を据えて長く働きたい」と考える人にとって、これは大きな魅力と言えるでしょう。

具体例として、ある地域の伝統的な製造業を営む企業が、後継者育成のために若手人材を募集しているケースを考えてみましょう。このような求人は、全国規模の転職サイトでは埋もれてしまいがちですが、地元のハローワークでは「地域経済を支える重要な求人」として相談員の目にも留まりやすく、求職者に紹介される機会も多くなります。ハローワークは、こうした地域経済の担い手となる企業と求職者とを繋ぐ重要なハブの役割を果たしているのです。

② 無料で職業相談ができる

転職活動は、時に孤独な戦いになりがちです。特に、キャリアの方向性に悩んでいたり、自分の強みが分からなくなったりすると、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。ハローワークでは、専門の相談員に無料でキャリアに関するあらゆる相談ができます。

相談員は、求職者と対話を重ねる中で、その人の経験やスキル、価値観を客観的に整理し、キャリアの棚卸しを手伝ってくれます。自分では気づかなかった強みや、思いもよらなかったキャリアの可能性を指摘してもらえることもあります。

また、特定の求人に応募する際には、「この会社の求める人物像は何か」「自分のどの経験をアピールすれば響くか」といった具体的なアドバイスも受けられます。民間の転職エージェントとは異なり、ハローワークの相談員は特定の企業への入社を強く勧めることはありません。あくまで公的・中立的な立場から、求職者本人の希望や適性を最優先に考えたサポートを提供してくれるため、安心して本音で相談できるのが大きなメリットです。

この無料相談を有効に活用するためには、事前に自分の経歴を整理し、何に悩んでいるのか、どんなキャリアを望んでいるのかをある程度まとめておくと良いでしょう。具体的な質問を用意していくことで、より的確で有益なアドバイスを引き出すことができます。

③ 職業訓練(ハロートレーニング)を受けられる

未経験の分野への転職や、ブランクからの復職を目指す際に大きな壁となるのが「スキルや知識の不足」です。ハローワークでは、この課題を克服するための強力なサポートとして、公的職業訓練制度「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」を提供しています。

ハロートレーニングの主な特徴は以下の通りです。

  • 原則無料の受講料: 国の予算で運営されているため、受講料は原則無料です(ただし、テキスト代や作業服代などの実費は自己負担となる場合があります)。民間のスクールに通えば数十万円かかるような専門的な講座も、無料で学べるチャンスがあります。
  • 多様な訓練コース: ITスキル(プログラミング、Webデザイン)、医療事務、介護福祉、簿記、CAD、電気工事士など、現在の労働市場で需要の高いスキルを習得できる多様なコースが用意されています。
  • 生活支援給付金: 一定の要件を満たす求職者がハロートレーニングを受講する場合、「職業訓練受講給付金」として月額10万円の給付金と通所手当、寄宿手当が支給される制度があります。これにより、訓練期間中の生活費の心配を軽減し、スキル習得に集中できます。(参照:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」)

例えば、「事務職の経験しかないが、将来性の高いIT業界に転職したい」と考える人が、プログラミングの基礎を学べる3ヶ月間のハロートレーニングを受講する、といった活用が考えられます。訓練を修了することで、未経験からでも応募できる求人の幅が格段に広がり、自信を持って新たなキャリアに挑戦する土台を築くことができます。スキルアップと転職活動を同時に、かつ経済的な負担を抑えながら進められる点は、ハローワークならではの非常に大きなメリットです。

④ 雇用保険(失業保険)の手続きができる

会社を自己都合や会社都合で退職した場合、次の就職先が決まるまでの生活を支えるために「雇用保険の基本手当(通称:失業保険)」を受給できます。この失業保険に関するすべての手続き(申請、受給資格の決定、失業の認定など)は、居住地を管轄するハローワークの独占業務です。

つまり、失業保険を受け取るためには、いずれにせよハローワークへ行く必要があります。そして、失業保険の受給資格を得るためには、「求職活動を行っている」という実績が求められます。

ハローワークを利用すれば、この二つを非常にスムーズに連携させることができます。

  1. ワンストップでの手続き: 離職後にハローワークへ行き、「求職の申込み」と「失業保険の受給資格決定」の手続きを同時に行えます。
  2. 求職活動の実績作り: ハローワークでの求人検索や職業相談、セミナーへの参加などが、失業認定日に報告すべき「求職活動実績」として認められます。

これにより、「失業保険の手続きのためにハローワークへ行き、そのついでに求人を探し、相談員と話す」というように、生活の安定確保と転職活動を効率的に両立させることが可能になります。民間の転職サービスのみを利用している場合でも、求職活動実績として認められるケースはありますが、失業認定のために結局はハローワークへ足を運ぶ必要があるため、ハローワークを活動の拠点の一つとすることで、手間を大幅に省くことができます。

⑤ 採用意欲の高い企業に出会える可能性がある

ハローワークに求人を掲載する企業には、いくつかの共通した特徴が見られます。その一つが、「急いで人材を確保したい」と考えているケースが多いことです。

無料で迅速に求人を掲載できるというハローワークの特性上、「急な欠員が出た」「新規プロジェクトですぐに人手が必要になった」といった状況の企業が利用する傾向があります。このような企業は採用意欲が非常に高いため、応募から面接、内定までの選考プロセスがスピーディーに進む可能性があります。

また、ハローワークが主催する「合同就職面接会」などのイベントも、採用意欲の高い企業と直接出会える絶好の機会です。これらのイベントでは、一度に多くの企業の採用担当者と話すことができ、その場で面接が行われることも少なくありません。書類選考をスキップして、直接自分をアピールできるチャンスがあるのは大きなメリットです。

もちろん、全ての求人がそうであるとは限りませんが、「すぐにでも働き始めたい」と考えている求職者にとっては、ハローワークは早期の就職決定に繋がりやすいプラットフォームと言えるでしょう。


ハローワークを利用する5つのデメリット・注意点

求人の質にばらつきがある、専門職やハイクラスの求人が少ない、相談員によってサポートの質が異なる、平日の日中しか開庁していない、企業の詳細な情報が分かりにくい場合がある

多くのメリットがある一方で、ハローワークには知っておくべきデメリットや注意点も存在します。これらを事前に把握しておくことで、ハローワークをより効果的に活用し、転職活動におけるミスマッチを防ぐことができます。

① 求人の質にばらつきがある

ハローワークの最大のメリットである「無料での求人掲載」は、裏を返せばデメリットにもなり得ます。有料の民間転職サイトとは異なり、求人掲載のハードルが低いため、残念ながら労働環境に問題がある、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような企業の求人が紛れ込んでいる可能性を否定できません。

具体的には、以下のような求人には注意が必要です。

  • 常に同じ内容で求人が掲載されている: 離職率が高く、常に人手不足の状態である可能性があります。
  • 給与や労働条件の記載が曖昧: 「月給25万円~(応相談)」「残業代は給与に含む」など、重要な条件が不明確な場合は、入社後にトラブルになるリスクがあります。
  • 仕事内容に比べて給与が不自然に高い: 未経験歓迎でありながら、相場よりも著しく高い給与を提示している場合、厳しいノルマや特殊な労働環境が隠されている可能性があります。

ハローワークの相談員もある程度のスクリーニングは行っていますが、すべての企業の内情を把握しているわけではありません。そのため、求人票の情報をうのみにせず、応募する前に必ず自分で企業研究を行うことが極めて重要です。企業の公式ウェブサイトの確認はもちろん、転職口コミサイトで元社員や現社員の評価をチェックするなど、多角的な情報収集を心がけましょう。

② 専門職やハイクラスの求人が少ない

ハローワークの求人は、地域の中小企業や未経験者歓迎のものが中心です。そのため、医師や弁護士といった高度な専門職、あるいは年収800万円を超えるような部長・役員クラスのハイクラス求人は、非常に少ない傾向にあります。

この理由は、そうした人材を求める企業や、そうしたキャリアを目指す求職者が、それぞれ別のプラットフォームを利用しているためです。

  • 企業側の事情: ハイクラス人材の採用は、企業の経営戦略に直結する重要なミッションです。そのため、費用をかけてでも、専門性の高い人材紹介を得意とする転職エージェントやヘッドハンティング会社を利用し、非公開で採用活動を進めるのが一般的です。
  • 求職者側の事情: 高い専門性や実績を持つ求職者も、自身の市場価値を正しく評価し、より良い条件を引き出してくれる専門のエージェントを頼ることが多くなります。

したがって、「これまでの経験を活かして大幅な年収アップを目指したい」「より責任のあるポジションでキャリアを築きたい」といったハイクラス転職を希望する場合、ハローワークだけで活動するのは非効率的と言わざるを得ません。このような場合は、専門分野に特化した転職エージェントや、ハイクラス向けの転職サービスを併用することが不可欠です。

③ 相談員によってサポートの質が異なる

無料で手厚い職業相談を受けられるのがハローワークの魅力ですが、そのサポートの質は、担当してくれる相談員によって差があるのが実情です。

ハローワークの相談員は、国家公務員である職員のほか、民間の人材会社などから派遣された委託職員など、さまざまな経歴を持つ人々で構成されています。キャリアコンサルタントの資格を持つ経験豊富な相談員もいれば、必ずしも転職市場の動向や特定業界の事情に精通しているとは言えない相談員もいます。

そのため、下記のような経験をする可能性もゼロではありません。

  • 事務的でマニュアル通りの対応しかしてもらえない。
  • 自分の希望や経歴を深く理解してもらえず、的外れな求人を紹介される。
  • 業界に関する知識が浅く、専門的な相談に乗ってもらえない。

もちろん、親身になって熱心にサポートしてくれる素晴らしい相談員も数多くいます。もし「この相談員とは相性が合わないな」「もっと的確なアドバイスが欲しい」と感じた場合は、遠慮せずに受付などで担当者の変更を申し出ることも可能です。また、自分自身が転職したい業界や職種について深く調べ、具体的な希望や質問をぶつけることで、相談員とのコミュニケーションをより円滑にし、質の高いサポートを引き出す努力も重要になります。

④ 平日の日中しか開庁していない

ハローワークの利用を考える上で、特に在職中の方にとって大きな障壁となるのが開庁時間です。ほとんどのハローワークは、原則として平日の午前8時30分から午後5時15分までしか開いていません。

これは、一般的な企業の勤務時間とほぼ同じであるため、在職しながら転職活動を進めている人が、平日の日中にハローワークへ足を運ぶのは非常に困難です。有給休暇を取得したり、業務の合間を縫ったりして時間を作る必要があります。

近年では、利用者からの要望に応え、一部のハローワークでは夜間(19時までなど)や土曜日に開庁している「サービス提供時間延長実施施設」もありますが、全国的に見ればまだ少数です。

もちろん、「ハローワークインターネットサービス」を利用すれば、24時間いつでも求人情報を検索することは可能です。しかし、求人の詳細(事業所名が非公開の場合)の確認や、応募に必須となる「紹介状」の発行、そして何より重要な職業相談は、開庁時間内にハローワークの窓口へ行かなければ利用できません。この時間的な制約は、民間の転職サイトやエージェントがオンラインや電話でいつでも対応してくれるのと比較すると、大きなデメリットと言えるでしょう。

⑤ 企業の詳細な情報が分かりにくい場合がある

ハローワークの求人票は、厚生労働省が定めたフォーマットに沿って作成されています。記載されているのは、職務内容、必要な経験・資格、給与、労働時間、休日、福利厚生といった基本的な情報が中心です。

もちろん、これらの情報は転職先を選ぶ上で不可欠ですが、「職場の雰囲気はどうか」「どんな人たちが働いているのか」「企業の文化や将来のビジョンは」といった、定性的な情報や企業のより深い内情は、求人票だけではほとんど分かりません。

民間の転職サイトであれば、写真や動画を多用して職場の様子を伝えたり、先輩社員のインタビュー記事を掲載したりと、求職者が働くイメージを掴みやすいように工夫されています。転職エージェントであれば、担当者が企業に直接訪問して得た、求人票には載らないリアルな情報(部署の人間関係や残業の実態など)を提供してくれます。

ハローワークではこうした情報が不足しがちであるため、前述の「求人の質にばらつきがある」というデメリットとも相まって、入社後のミスマッチを引き起こすリスクがあります。この点を補うためにも、ハローワークで見つけた求人については、自分自身で徹底的に情報収集を行う「自衛」の姿勢が不可欠です。


ハローワークを使った転職活動の始め方【6ステップ】

求職申込み手続きをする、ハローワークカードを受け取る、求人を探す、窓口で職業相談をする、紹介状を受け取る、企業に応募・選考に進む

ハローワークを初めて利用する方でもスムーズに転職活動が進められるよう、具体的な手順を6つのステップに分けて解説します。この流れを把握しておけば、当日窓口で戸惑うことも少なくなるでしょう。

① 【STEP1】求職申込み手続きをする

転職活動の第一歩は、「求職申告」です。これは、あなたが「仕事を探している」という意思をハローワークに登録する手続きです。手続き方法は主に2つあります。

  1. ハローワークに直接行って申し込む:
    施設内に設置されているパソコンで、必要事項を入力します。氏名や住所といった基本情報に加え、これまでの職務経歴、希望する職種、勤務地、給与、勤務時間などの条件を詳しく入力していきます。何を入力すればよいか分からない場合は、近くの職員に質問できます。
  2. 自宅のパソコンやスマートフォンで事前に申し込む(仮登録):
    「ハローワークインターネットサービス」から、事前に求職情報を入力しておくことができます。これを「仮登録」といい、事前に済ませておくことで、ハローワークの窓口での手続き時間を大幅に短縮できるため、非常におすすめです。仮登録後、14日以内にハローワークの窓口へ行き、本登録の手続きを完了させる必要があります。

この申込みで入力する希望条件は、後からでも変更可能です。最初はあまり絞り込みすぎず、少し広めの条件で登録しておくと、より多くの求人に出会える可能性があります。

② 【STEP2】ハローワークカードを受け取る

求職申込み(本登録)が完了すると、窓口で「ハローワークカード」が発行されます。これは、あなたの求職者情報が登録されていることを証明するカードで、今後のハローワーク利用時に毎回必要となります。

このカードには求職番号が記載されており、窓口で職業相談をしたり、紹介状を発行してもらったりする際に提示を求められます。いわば、ハローワークにおけるあなたの身分証明書のようなものです。大切に保管し、ハローワークへ行く際は忘れずに持参しましょう。もし紛失してしまった場合でも、窓口で本人確認ができれば再発行が可能です。

③ 【STEP3】求人を探す

ハローワークカードを受け取ったら、いよいよ本格的な求人探しが始まります。求人の探し方には、主に以下の3つの方法があります(詳細は後の章で詳しく解説します)。

  • ハローワーク内のパソコンで検索する: 施設内の検索機を使い、希望条件で求人を絞り込んで探します。
  • ハローワークインターネットサービスを利用する: 自宅や外出先から、パソコンやスマートフォンで24時間いつでも求人を探せます。
  • 窓口の相談員に相談する: 自分の希望を伝え、プロの視点からマッチする求人を紹介してもらいます。

これらの方法を組み合わせながら、興味の持てる求人や、応募を検討したい求人をいくつかリストアップしていきましょう。気になる求人が見つかったら、求人票を印刷しておくと、次のステップがスムーズに進みます。

④ 【STEP4】窓口で職業相談をする

応募したい求人が見つかったら、印刷した求人票を持って、職業相談の窓口へ行きます。ここで、ハローワークカードを提示し、相談員に「この求人について詳しく知りたい」「応募を検討している」と伝えます。

相談員は、その求人についてより詳細な情報(募集背景、選考のポイント、過去の応募状況など)を教えてくれることがあります。また、あなたの経歴やスキルと、企業が求める人物像がマッチしているか、客観的な視点でアドバイスをしてくれます。

この相談は、応募前の最終確認の場として非常に重要です。不安な点や疑問点は、この段階で遠慮なく質問し、解消しておきましょう。「求人票のこの部分がよく分からないのですが…」「未経験でも本当大丈夫でしょうか?」といった具体的な質問をぶつけることで、ミスマッチを防ぐことができます。

⑤ 【STEP5】紹介状を受け取る

相談員との面談を経て、応募の意思が固まったら、その場で「紹介状」を発行してもらいます。

紹介状とは、あなたがハローワークの紹介を通じてその企業に応募することを証明する公的な書類です。多くのハローワーク求人では、この紹介状がなければ応募を受け付けてもらえません。企業側は、この紹介状を受け取ることで、ハローワーク経由の正式な応募者としてあなたを認識します。

紹介状には有効期限(通常は発行された月の翌月末まで)があるため、発行してもらったら速やかに応募準備を進めましょう。紹介状の発行は、応募への強い意志を示す第一歩となります。

⑥ 【STEP6】企業に応募・選考に進む

紹介状を受け取ったら、いよいよ企業への応募です。応募方法は企業によって異なりますが、一般的には「紹介状」「履歴書」「職務経歴書」の3点をセットにして、郵送または持参します。

応募後の選考プロセス(書類選考、面接日の調整、合否連絡など)は、あなたと企業が直接やりとりを行うことになります。ハローワークが間に入ってスケジュール調整をしてくれるわけではないので、注意が必要です。

ただし、選考過程で不安なことがあれば、いつでもハローワークに相談できます。特に面接前には、再度窓口を訪れて面接対策(模擬面接など)をお願いするのも非常に有効です。内定を獲得するその日まで、ハローワークを頼れるパートナーとして活用しましょう。


ハローワークでの求人の探し方3選

ハローワークで自分に合った求人を見つけるためには、効果的な探し方を知っておくことが大切です。ここでは、主な3つの求人検索方法について、それぞれのメリット・デメリットと活用のポイントを解説します。

① ハローワーク内のパソコンで検索する

ハローワークの施設内に設置されている求人検索・登録用のパソコンを利用する方法です。最もオーソドックスな探し方と言えるでしょう。

  • メリット:
    • その場で求人票を印刷し、すぐに窓口で相談できる。
    • 気になる求人が見つかれば、即座に紹介状を発行してもらえる。
    • 操作方法が分からなければ、近くの職員にすぐに質問できる。
    • ハローワークでしか閲覧できない非公開の事業所名なども確認できる。
  • デメリット:
    • ハローワークの開庁時間内でしか利用できない。
    • 混雑している場合は、待ち時間が発生したり、利用時間に制限があったりする。
    • 落ち着いてじっくりと求人情報を比較検討しにくい場合がある。

活用のポイント:
この方法は、「今日は一日ハローワークで活動する」と決めた日に集中して行うのに向いています。 事前に自宅のPCなどで気になる求人の求人番号を控えておき、ハローワークのPCでその番号を入力してすぐに求人票を呼び出す、といった使い方をすると効率的です。また、窓口相談とセットで利用することで、検索から応募までを1日で完結させることも可能です。

② ハローワークインターネットサービスを利用する

厚生労働省が運営する「ハローワークインターネットサービス」は、全国のハローワークに登録されている求人情報を、24時間365日、いつでもどこでも検索できるウェブサイトです。(参照:ハローワークインターネットサービス)

  • メリット:
    • 時間や場所を選ばずに求人検索ができるため、在職中の人でも利用しやすい。
    • キーワード検索や詳細な条件設定で、効率的に求人を絞り込める。
    • 「求職者マイページ」を開設すれば、気になる求人を保存したり、検索条件を登録したりできる。
    • 一部の求人では、事業所のオンライン自主応募を受け付けており、紹介状なしで直接応募できる場合がある。
  • デメリット:
    • 企業の判断により、事業所名や所在地などの詳細が非公開になっている求人があり、その場合はハローワークの窓口に行かないと確認できない。
    • 紹介状が必要な求人に応募する場合は、結局ハローワークへ行く必要がある。
    • 手軽に検索できる反面、じっくり考えずに多数応募してしまい、管理が煩雑になる可能性がある。

活用のポイント:
日常的な情報収集や、求人市場の動向を把握するためのメインツールとして活用するのがおすすめです。通勤時間や寝る前の時間など、隙間時間を使ってこまめに新着求人をチェックしましょう。そして、気になる求人を見つけたら「お気に入り登録」をしておき、週末や有給休暇の日にハローワークへ行って、まとめて相談・応募するという流れが効率的です。求職者マイページは必ず開設しておきましょう。

③ 窓口の相談員に相談する

求人検索機やインターネットで探すだけでなく、窓口で相談員に直接求人を探してもらう方法も非常に有効です。

  • メリット:
    • 自分の経歴や希望を伝えることで、自分では見つけられなかった思わぬ優良求人を紹介してもらえる可能性がある。
    • 相談員しか知らない新着の求人情報や、企業の詳細な背景情報を教えてもらえることがある。
    • 客観的な視点から、自分の市場価値や適性に合った求人を提案してくれる。
    • 求人を探す手間が省ける。
  • デメリット:
    • 相談員のスキルや経験によって、提案の質が変わる可能性がある。
    • 自分の希望をうまく伝えられないと、ミスマッチな求人を紹介されることがある。
    • 混雑時には待ち時間が発生する。

活用のポイント:
この方法を最大限に活用するカギは、「自分の希望や経歴を、具体的かつ正直に伝えること」です。事前に職務経歴書を最新の状態に更新し、希望する職種、業種、労働条件、キャリアプランなどを自分なりに整理しておきましょう。「何でもいいので仕事を紹介してください」という姿勢ではなく、「これまでの営業経験を活かして、地域に貢献できる仕事に就きたい。希望年収は○○円以上です」といったように、具体的な要望を伝えることで、相談員も的を絞った求人提案がしやすくなります。信頼できる相談員を見つけ、良きパートナーとして活用することが、転職成功への近道です。


ハローワークを上手に活用するためのポイント

転職サイトや転職エージェントと併用する、求人情報はうのみにせず自分で調べる、担当者とこまめにコミュニケーションを取る

ハローワークは強力なツールですが、ただ漫然と利用するだけではその真価を発揮できません。ここでは、ハローワークを最大限に活用し、転職活動を成功に導くための3つの重要なポイントを紹介します。

転職サイトや転職エージェントと併用する

最も重要なポイントは、ハローワークだけに頼るのではなく、民間の転職サイトや転職エージェントと必ず併用することです。それぞれのサービスには得意分野と不得意分野があり、それらを組み合わせることで、転職活動の網羅性と効率性を飛躍的に高めることができます。

サービスの種類 得意な求人 サポートの特徴 おすすめの活用法
ハローワーク 地元の中小企業、未経験歓迎求人 公平・中立な相談、職業訓練、雇用保険手続き 地元での就職活動の基盤、スキルアップ、生活保障
転職サイト 大手からベンチャーまで幅広い求人、多様な業種・職種 自分のペースで検索・応募、スカウト機能、自己分析ツール 幅広い情報収集、市場の動向把握、自分の市場価値の確認
転職エージェント 専門職、ハイクラス求人、非公開求人 専任アドバイザーによる手厚いサポート(書類添削、面接対策、年収交渉) キャリアアップ、年収アップ、専門性を活かした転職

例えば、以下のような使い分けが考えられます。
「普段は転職サイトで幅広い求人をチェックし、スカウト機能を活用して自分の市場価値を探る。同時に、ハイクラス転職を目指して転職エージェントに登録し、非公開求人の紹介や専門的なアドバイスを受ける。そして、地元での安定した働き方も視野に入れ、ハローワークで地域密着の優良企業を探しつつ、雇用保険の手続きも進める。」

このように、複数のチャネルを持つことで、情報の偏りをなくし、あらゆる可能性を検討できます。 ハローワークのデメリットである「ハイクラス求人の少なさ」や「開庁時間の制約」を民間サービスで補い、民間サービスのデメリットである「地域求人の手薄さ」をハローワークで補う。この相補的な活用こそが、現代の転職活動における最適な戦略と言えるでしょう。

求人情報はうのみにせず自分で調べる

ハローワークのデメリットとして「求人の質にばらつきがある」点を挙げました。このリスクを回避するためには、「自分の身は自分で守る」という意識を持ち、求人票の情報を鵜呑みにせず、徹底した企業研究を行うことが不可欠です。

気になる求人が見つかったら、応募する前に必ず以下のことを実行しましょう。

  1. 企業の公式ウェブサイトを精読する:
    事業内容、企業理念、沿革、製品・サービスなどを詳しく確認します。ウェブサイトが長期間更新されていなかったり、情報が極端に少なかったりする場合は注意が必要です。
  2. 企業の評判を口コミサイトで確認する:
    「OpenWork」や「転職会議」といった企業の口コミサイトで、現社員や元社員のリアルな声を確認します。特に、「組織体制・企業文化」「働きがい・成長」「残業時間・ワークライフバランス」「年収・給与制度」といった項目は参考になります。ただし、口コミは個人の主観であるため、複数の意見を総合的に判断することが大切です。
  3. ニュース検索やSNSでの検索:
    企業名でニュース検索を行い、過去にネガティブな報道がなかったかを確認します。また、SNSで社名や関連ワードを検索すると、社員や顧客の生の声が見つかることもあります。
  4. 面接で逆質問を徹底する:
    選考に進んだら、面接は企業があなたを評価する場であると同時に、あなたが企業を評価する場でもあります。労働条件(特に残業時間の実態や休日出勤の有無)、配属部署の体制、社員の平均年齢や勤続年数、入社後のキャリアパスなど、気になる点は遠慮なく質問しましょう。質問に対する回答が曖昧だったり、はぐらかされたりする場合は、何か隠していることがあるのかもしれません。

これらの地道な調査を面倒に感じるかもしれませんが、入社後のミスマッチで早期離職してしまうことほど、時間と労力の無駄はありません。 納得のいく転職を実現するために、この一手間を惜しまないようにしましょう。

担当者とこまめにコミュニケーションを取る

ハローワークを効果的に利用している人は、受け身ではなく、能動的に活用しています。その鍵となるのが、窓口の相談員と良好な関係を築き、こまめにコミュニケーションを取ることです。

一度相談して終わりにするのではなく、定期的にハローワークに足を運び、進捗状況を報告したり、新たな相談をしたりすることが重要です。

  • 熱意を伝える: 定期的に顔を出すことで、「本気で転職活動をしている」という熱意が相談員に伝わります。相談員も人間ですから、熱心な求職者には、より親身になってサポートしたいと思うものです。良い求人が入ってきたときに、優先的に声をかけてもらえる可能性も高まります。
  • 最新情報を共有する: 「先日、民間エージェントからこんな求人を紹介されたのですが、どう思いますか?」「A社の選考が一次面接に進みました」といったように、他の活動状況を共有することで、相談員はあなたの現在の市場価値や活動のフェーズを正確に把握できます。それにより、より的確なアドバイスや、次の打ち手を一緒に考えてくれるようになります。
  • 信頼関係を築く: コミュニケーションを重ねることで、相談員との間に信頼関係が生まれます。あなたの強みや人柄を深く理解してくれるようになれば、企業にあなたを推薦する際にも、より説得力のある言葉でプッシュしてくれるかもしれません。

「良い求人があったら連絡が来るだろう」と待っているだけでは、チャンスを逃してしまいます。自ら積極的に情報を求め、相談員を「転職活動のパートナー」として巻き込んでいく姿勢が、ハローワーク活用の成否を分けると言っても過言ではありません。


ハローワークと民間の転職サービスとの違い

転職活動の手段として、ハローワークと民間の転職サービス(転職サイト、転職エージェント)はよく比較されます。どちらが良い・悪いというわけではなく、それぞれに異なる特徴と役割があります。ここでは、その違いを3つの観点から明確にし、あなたがどちらのサービスを、どのように利用すべきかの判断材料を提供します。

運営元の違い

サービスの根本的な性格を決定づけているのが、運営元の違いです。

  • ハローワーク:
    運営元は国(厚生労働省)です。その目的は、国民の雇用の安定と促進という公共の利益にあります。営利を目的としていないため、求職者からも求人企業からも料金を徴収しません。あくまでも、仕事を探す全ての人々に対するセーフティネットとしての役割を担っており、公平性・中立性が重視されます。
  • 民間の転職サービス:
    運営元は株式会社などの民間企業です。その目的は、事業としての利益を追求することにあります。主な収益源は、求人を掲載する企業からの掲載料や、採用が成功した際に企業から支払われる成功報酬です。そのため、サービス内容は「いかに企業と求職者を効率的にマッチングさせるか」という点に最適化されています。

この運営元の違いが、求人内容やサポート体制の差となって現れてきます。

求人内容の違い

集まってくる求人の種類にも、明確な違いがあります。

項目 ハローワーク 民間の転職サービス
主な求人企業 地域密着の中小企業が中心 大手・有名企業、ベンチャー企業、外資系企業など多岐にわたる
求人掲載料 無料 有料(数十万~数百万円)
求人の特徴 未経験者歓迎、全年齢対象、地元採用が多い 専門職、管理職、ハイクラス求人が豊富
求人エリア 全国各地を網羅(特に地方に強い) 都市部に集中する傾向がある
非公開求人 基本的にない(一部、事業所名非公開はある) 豊富に存在する(特に転職エージェント)

ハローワークは、無料で掲載できるため、採用コストをかけられない中小企業や、地域に根差した企業の求人が集まりやすいプラットフォームです。Uターン・Iターン転職や、未経験から挑戦できる仕事を探す際には非常に強力です。

一方、民間の転職サービス、特に転職エージェントは、企業から高額な成功報酬を得ています。そのため、年収の高い専門職や経営幹部候補といった、採用が難しく、企業がコストをかけてでも確保したいと考える「ハイクラス求人」や、競合他社に知られずに採用を進めたい「非公開求人」を数多く扱っています。キャリアアップや年収アップを明確に目指すのであれば、民間サービスの利用が不可欠です。

サポート体制の違い

求職者に対するサポートのスタイルも大きく異なります。

  • ハローワーク:
    サポートの基本は「求職者の自主的な活動を支援する」というスタンスです。窓口に行けば相談に乗ってくれますが、手取り足取り全てを代行してくれるわけではありません。求人探しから応募、企業とのやり取りまで、基本的には自分自身で進める必要があります。ただし、職業訓練や雇用保険手続きといった、公的機関ならではのユニークで手厚いサポートが受けられます。相談員は中立的な立場からアドバイスをくれるため、客観的な意見が欲しい場合に適しています。
  • 民間の転職サービス(特に転職エージェント):
    専任のキャリアアドバイザーによる、一気通貫の積極的なサポートが特徴です。求職者の希望や経歴をヒアリングした上で、最適な求人を提案し、応募書類の添削、面接日程の調整、企業との条件交渉(年収など)まで代行してくれます。在職中で忙しい人や、プロの視点で戦略的に転職活動を進めたい人にとっては、非常に心強い存在です。ただし、ビジネスであるため、内定の可能性が高い求人を優先的に紹介される傾向があることも理解しておく必要があります。

まとめると、ハローワークは「公的なセーフティネット」であり、自分のペースで活動したい人や、地域での就職、スキルアップを目指す人に向いています。対して民間サービスは「転職のプロフェッショナルパートナー」であり、効率性や専門的なサポート、キャリアアップを求める人に適しています。 自分の状況や目的に合わせて、これらのサービスを賢く使い分ける、あるいは併用することが成功への鍵となります。


ハローワークの利用が向いている人の特徴

地元で働きたい人、未経験の職種に挑戦したい人、自分のペースでじっくり転職活動をしたい人

これまでの内容を踏まえ、どのような人がハローワークの利用に特に向いているのか、具体的な人物像を3つのタイプに分けて紹介します。ご自身が当てはまるか、チェックしてみてください。

地元で働きたい人

「生まれ育った街を離れたくない」「親の近くで暮らしたい」「転勤のない環境で、腰を据えて長く働きたい」
このように、特定の地域に根差した働き方を強く希望する人にとって、ハローワークは最も頼りになる存在です。

全国規模の転職サイトでは、求人がどうしても都市部に偏りがちで、地方の求人情報は限られてしまいます。しかし、ハローワークは全国各市町村に設置された「地域の雇用拠点」です。その地域の中小企業が、人材を募集する際に真っ先に利用するプラットフォームであり、地元企業の求人情報が最も豊富に集まっています。

大手転職サイトには掲載されていない、地域社会に貢献する隠れた優良企業や、アットホームな雰囲気の地場企業との出会いが期待できます。Uターン・Iターン転職を成功させるための情報収集の場としても、ハローワークは欠かせない存在と言えるでしょう。「地域貢献」や「安定した生活基盤」をキャリアの軸に置く人は、まず最寄りのハローワークに足を運んでみることを強くお勧めします。

未経験の職種に挑戦したい人

「これまでとは全く違う業界でキャリアをリセットしたい」「将来のために、専門的なスキルを身につけたい」
このように、キャリアチェンジを目指す未経験者にとって、ハローワークは強力な味方です。

その最大の理由は、メリットの章でも詳しく解説した「ハロートレーニング(公的職業訓練)」の存在です。IT、医療事務、介護、Webデザインなど、需要の高いスキルを原則無料で学べるこの制度は、キャリアチェンジの大きな後押しとなります。民間のスクールに通う経済的な余裕がない人でも、スキルを習得し、新たなキャリアへの扉を開くことができます。

また、ハローワークに集まる求人には「未経験者歓迎」のものが比較的多く含まれています。これは、人柄やポテンシャルを重視する中小企業が多いことや、育成を前提とした採用を考えている企業が多いためです。ハローワークの相談員も、未経験者の就職支援に慣れています。あなたのこれまでの経験から、新しい職種でも活かせるポータブルスキルを見つけ出し、応募書類や面接で効果的にアピールする方法を一緒に考えてくれるでしょう。

自分のペースでじっくり転職活動をしたい人

「転職はしたいけれど、急いでいるわけではない」「エージェントから頻繁に連絡が来るのは少し苦手」「色々な求人をじっくり比較検討して、納得のいく一社を見つけたい」
このように、他者からのプレッシャーを感じることなく、自分のペースで転職活動を進めたい人にも、ハローワークは適しています。

転職エージェントは、求職者の転職を成功させることで利益を得るビジネスモデルのため、どうしてもスピーディーな意思決定を促す傾向があります。もちろん、それは効率的な転職活動に繋がる一方で、「急かされているようで焦ってしまう」と感じる人もいるでしょう。

その点、ハローワークは公的機関であるため、応募を急かしたり、特定の企業を強く勧めたりすることはありません。あくまで主役は求職者自身であり、相談員はサポート役に徹します。求人情報を閲覧するだけ、相談するだけ、といった利用も全く問題ありません。自分の納得がいくまで情報を集め、キャリアについて深く考え、最適なタイミングで次の一歩を踏み出したいと考える人にとって、ハローワークの「待ちの姿勢」は、むしろ心地よい環境と感じられるはずです。


民間の転職サービスの利用が向いている人の特徴

効率的に転職活動を進めたい人、専門的なサポートを受けたい人、非公開求人やハイクラス求人に応募したい人

一方で、ハローワークよりも民間の転職サービス(転職サイトや転職エージェント)の利用が適している人もいます。ここでは、その代表的な3つのタイプを紹介します。

効率的に転職活動を進めたい人

「在職中で転職活動に割ける時間が限られている」「できるだけ早く次の職場を決めたい」
このように、時間的な制約がある中で、スピーディーかつ効率的に転職活動を進めたい人には、民間の転職サービスが断然おすすめです。

転職サイトは24時間いつでもどこでも求人検索・応募ができ、スマートフォンアプリで隙間時間に活動を進められます。特に転職エージェントを利用すれば、その効率はさらに高まります。

  • 時間のかかる作業の代行: キャリアアドバイザーがあなたの希望に沿った求人を探して提案してくれるため、自分で膨大な求人情報を探す手間が省けます。また、面倒な面接日程の調整も代行してくれます。
  • 非公開求人の活用: 一般には公開されていない優良企業の求人を紹介してもらえるため、自分で探すよりも質の高い選択肢に短時間でアクセスできます。

仕事と転職活動を両立させなければならない多忙なビジネスパーソンにとって、これらのサポートは非常に価値が高く、転職成功までの時間を大幅に短縮することに繋がります。

専門的なサポートを受けたい人

「自分の市場価値を客観的に知りたい」「職務経歴書を、より魅力的にブラッシュアップしたい」「面接でうまく自分をアピールできない」「年収などの条件交渉に自信がない」
こうした、転職活動のノウハウに関する専門的なサポートを求める人には、転職エージェントの利用が最適です。

転職エージェントのキャリアアドバイザーは、日々多くの求職者と企業に接している「転職のプロ」です。

  • キャリアの棚卸しと戦略立案: あなたの経歴を客観的に分析し、強みやアピールポイントを言語化してくれます。その上で、キャリアプランに沿った戦略的な転職活動を一緒に考えてくれます。
  • 質の高い応募書類作成: 各業界や企業が求める人物像を熟知しているため、「響く」職務経歴書の書き方を具体的に指導してくれます。
  • 実践的な面接対策: 過去の面接データに基づき、想定される質問や効果的な回答例など、企業ごとの具体的な面接対策を行ってくれます。
  • 条件交渉の代行: 自分では言い出しにくい給与や待遇に関する交渉も、あなたの代わりに行ってくれます。プロが交渉することで、個人で応募するよりも良い条件を引き出せる可能性が高まります。

これらの専門的なサポートは、ハローワークでは得られない、転職エージェントならではの大きな付加価値です。

非公開求人やハイクラス求人に応募したい人

「キャリアアップして、より高い年収を目指したい」「これまでの専門性を活かして、より責任のあるポジションに就きたい」「誰もが知る有名企業や、成長著しいベンチャー企業で働きたい」
このように、明確なキャリアアップや、いわゆる「ハイクラス転職」を目指す人は、民間の転職サービス、特に転職エージェントの活用が必須となります。

前述の通り、企業の重要なポジションや専門職の求人は、競合他社に知られないよう、あるいは応募の殺到を避けるために「非公開求人」として、信頼できる転職エージェントにのみ採用を依頼するケースが非常に多いです。ハローワークや転職サイトの公開求人だけを見ていては、こうした優良な求人に出会うチャンスを逃してしまいます。

年収800万円以上を目指すようなハイクラス層、あるいは特定の業界・職種に特化した専門性の高い人材は、それらの領域に特化した転職エージェントに登録することで、初めてアクセスできる求人情報やキャリアの選択肢が格段に広がります。 自分のキャリアをより高みへと引き上げたいのであれば、民間サービスの活用は避けては通れない道です。


転職活動を効率化するおすすめ転職サービス

ハローワークと併用することで、転職活動の幅と質を大きく向上させられる民間の転職サービス。ここでは、数あるサービスの中から、実績が豊富で信頼性の高い代表的なものをいくつか紹介します。

おすすめの転職サイト

自分のペースで幅広い求人から探したい人向けの転職サイトです。

リクナビNEXT

株式会社リクルートが運営する、国内最大級の求人数を誇る転職サイトです。あらゆる業種・職種の求人を網羅しており、転職を考え始めたらまず登録しておきたいサービスの一つです。強みは、独自の自己分析ツール「グッドポイント診断」。自分の強みを客観的に把握でき、応募書類や面接での自己PRに役立ちます。また、登録した経歴に興味を持った企業から直接オファーが届く「スカウト機能」も充実しており、思わぬ企業との出会いが期待できます。(参照:リクナビNEXT公式サイト)

doda

パーソルキャリア株式会社が運営する、転職サイトと転職エージェントの両方の機能を併せ持つ総合転職サービスです。自分で求人を探して応募することも、エージェントに相談して求人を紹介してもらうことも、一つのサービス内で完結できます。「まずはサイトで情報収集し、良い求人があればエージェントに相談する」といった柔軟な使い方が可能です。年収査定やキャリアタイプ診断などのコンテンツも豊富で、転職活動のあらゆるフェーズで役立ちます。(参照:doda公式サイト)

エン転職

エン・ジャパン株式会社が運営する転職サイトで、「正直・詳細な求人情報」をコンセプトに掲げているのが大きな特徴です。仕事の良い点だけでなく、厳しい点や向いていない人の特徴なども率直に記載されており、入社後のミスマッチを防ぐための工夫がなされています。また、応募した企業ごとの「面接対策レポート」が無料で提供されるなど、ユーザーサポートの手厚さにも定評があります。(参照:エン転職公式サイト)

おすすめの転職エージェント

専任のアドバイザーによる手厚いサポートを受けたい人向けの転職エージェントです。

リクルートエージェント

株式会社リクルートが運営する、業界No.1の求人数を誇る最大手の転職エージェントです。長年の実績から企業との信頼関係が厚く、質の高い非公開求人を多数保有しています。各業界に精通したキャリアアドバイザーが、キャリアの棚卸しから書類添削、面接対策まで一貫してサポートしてくれます。転職を成功させたいなら、まず登録しておくべきエージェントと言えるでしょう。(参照:リクルートエージェント公式サイト)

マイナビエージェント

株式会社マイナビが運営する転職エージェントで、特に20代~30代の若手層や第二新卒の転職支援に強みを持っています。中小企業の優良求人も多く扱っており、大手だけでなく、自分に合った規模の企業で働きたいと考える人にも適しています。丁寧で親身なサポートに定評があり、初めて転職する人でも安心して相談できるでしょう。(参照:マイナビエージェント公式サイト)

doda X

パーソルキャリア株式会社が運営する、ハイクラス・エグゼクティブ層に特化した転職サービスです。年収800万円以上の求人が中心で、企業の第一線で活躍するプロフェッショナルや管理職向けの案件を多数扱っています。ヘッドハンターからのスカウトや、企業からの直接オファーを受けることができ、自分の市場価値を試したい、さらなるキャリアアップを目指したいという方に最適なプラットフォームです。(参照:doda X公式サイト)